万葉集巻第二十4306-4314番歌(秋と言へば心ぞ痛き)~アルケーを知りたい(1606)

▼今日、七夕の神事は7月6日の夜から7日の早朝の間に行われるそうだ。「午前1時頃には天頂付近に主要な星が上り、天の川、牽牛星、織女星の三つが最も見頃になる」という。家持も独りで天を見上げていたのだ。「七夕」なのに八首作ったのは、どうしてだろう。

 七夕の歌八首
初秋風涼しき夕解かむとぞ 紐は結びし妹に逢はむため 万4306
*初めて吹く秋の風が涼しい夕方。その夕べにまた解こうと思って結んだ紐です、これは。彼女に逢いたくて。

秋と言へば心ぞ痛きうたて異に 花になそへて見まく欲りかも 万4307
*秋というと心が痛い。いつもと違って、彼女を花になぞらえて眺めたいと思うからでしょう。

初尾花花に見むとし天の川 へなりにけらし年の緒長く 万4308
*すぐ散る花のようにちょっとしか逢えないのは、長い年月天の川が隔てているからだ。

秋風に靡く川びのにこ草の にこよかにしも思ほゆるかも 万4309
*秋風に川岸のにこ草が靡いているけど、これは二人が逢えると思ってにこにこするからだな。

秋されば霧立ちわたる天の川 石並置かば継ぎて見むかも 万4310
*秋になると霧た立ち渡る天の川。ここに石を並べればいつでも二人は渡って逢えるのに。

秋風に今か今かと紐解きて うら待ち居るに月かたぶきぬ 万4311
*秋風に吹かれながら相手が来るのを今か今かと紐解いて待っているうちに月が傾いてきた。

秋草に置く白露の飽かずのみ 相見るものを月をし待たむ 万4312
*秋草の白露を飽きず眺めるようにお互い会えるはずなのに、私は月だけ待っているよ。

青波に袖さへ濡れて漕ぐ舟の かし振るほどにさ夜更けなむか 万4313
 右は、大伴宿禰家持、独り天漢を仰ぎて作る。
*青波に袖を濡らしながら漕ぐ舟、つなぎ止めようとするうちにすっかり夜が更けてしまう。

【似顔絵サロン】大伴 家持 おおともの やかもち 718 - 785 公卿・歌人。子が永主(ながぬし)。三十六歌仙の一人。785年の藤原種継事件に関わるも、既に死去していたため官位剥奪。20年後に名誉回復し、万葉集も表に出た。 















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

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