万葉集巻第二十4314-4320番歌(八千種に草木を植ゑて)~アルケーを知りたい(1607)
▼前回は七夕をお題にした八首、今回は秋の野をお題にした六首プラスワン。プラスワンといったのが4314番で、季節ごとの花を愛でるために多くの種類の草木を植えましょう、という歌。この歌を眺めて、そういえば大学にもたくさんの草木があるなあ、確かに季節の変化を感じるなあ、と気が付いた。大学の緑は歴史を踏まえた文化だったのだ(今ごろ言うか)。4315番は宮人の服を、4316番は女郎花、4317番は男女みんな、4318番は萩、4319番は鹿、4320番はますらをと鹿を詠った作品。秋の野をテーマに、鍵になる対象にピントを合わせる作り方とまとめ方が心憎い。
八千種に草木を植ゑて時ごとに 咲かむ花をし見つつ偲はな 万4314
右の一首は、同じき月の二十八日に、大伴宿禰家持作る。
*いろんな種類の草木を植えて、季節ごとに咲く花を見て楽しみたいものですな。
宮人の袖付け衣秋萩に にほひよろしき高円宮 万4315
*宮人が着用する袖が付いた衣裳が秋萩によく映える高円の宮であります。
高円の宮の裾廻の野づかさに 今咲けるらむをみなへしはも 万4316
*高円の宮の廻りの野原に今咲いている女郎花だよ。
秋野には今こそ行かめもののふの 男女の花にほひ見に 万4317
*秋の花が咲く草原に今こそ行かなくちゃ。男女の姿に花がよく映える景色を見るために。
秋の野に露負へる萩を手折らずて あたら盛りを過ぐしてむとか 万4318
*秋の野で露が降りた萩。手折られないまま空しく盛りを過ごしていくのか。
高円の秋野の上の朝霧に 妻呼ぶを鹿出で立つらむか 万4319
*高円の秋。野原に朝霧が出ると、牡鹿が現れて妻を呼ぶのだろう。
ますらをの呼び立てしかばさを鹿の 胸別け行かむ秋野萩原 万4320
右の歌六首は、兵部少輔大伴宿禰家持、独り秋野を憶ひて、いささかに拙懐を述べて作る。
*ますらをが追い立てると、雄鹿は野原の萩を胸で分けるようにして進むのだろう。
【似顔絵サロン】大伴 家持 おおともの やかもち 718 - 785 公卿・歌人。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20
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