万葉集巻第二十4325-4327番歌(我が妻も絵に描き取らむ)~アルケーを知りたい(1610)

▼4325番と4326番は、静岡出身の男性二人が防人として筑紫に派遣されるときに父母を花に喩えた歌。同じ佐野郡の出身なので、二人が話し合いながら作った歌のよう。
4327番は、写真がない時代だったので、妻の絵を描いておけば良かった、という歌。
これらの歌は防人を筑紫まで引率する役割の人が収集して家持に提出していた。家持はその歌の中から良きものを選んで万葉集の第20巻に収めた。ありがたい。

父母も花にもがもや草枕 旅は行くとも捧ごて行かむ 万4325
 右の一首は佐野の郡の丈部黒当
*父母が花であれば、この旅路でも捧げて行くのですが。

父母が殿の後方のももよ草 百代いでませ我が来るまで 万4326
 右の一首は同じき郡の壬生部足国
*父母の家に植わっているももよ草のように、ずっと元気でいてください、私が戻ってくるまで。

我が妻も絵に描き取らむ暇もが 旅行く我れは見つつ偲はむ 万4327
 右の一首は長下の郡の物部古麻呂
*私の妻の似顔絵を描く暇があれば良かったのに。旅先で見ては思い出すのに。

二月の六日、防人部領使遠江の国の史生坂本朝臣人上
進つ歌の数十八首。
ただし、拙劣の歌十一首有るは取り載せず。

【似顔絵サロン】丈部 黒当 はせつかべ の くろまさ ? - ? 奈良時代の防人。遠江国(静岡県)佐野郡の出身。丈部は軍事的部民。755年、防人として筑紫に派遣。















生玉部 足国 いくたまべ の たりくに ? - ? 奈良時代、遠江国佐野郡の防人。755年、坂本人上に率いられ筑紫に派遣。















物部 古麻呂/古麿 もののべ の こまろ ? - ? 奈良時代の防人。遠江国長下郡の出身。755年、防人として筑紫に派遣。















坂本 人上 さかもと の ひとかみ ? - ? 奈良時代の人物。755年、遠江国の史生の時、防人部領使として、物部秋持・丈部真麻呂・丈部黒当・生玉部足国・物部古麻呂らの防人を筑紫まで引率。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

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