万葉集巻第二十4371-4372番歌(橘の下吹く風のかぐはしき)~アルケーを知りたい(1631)

▼防人が家を離れて思い出すのは故郷の筑波山。それも風に運ばれてくる橘の花の匂い。4341番から、居心地の良い里を離れて心細くなっている気持ちが伝わる。
4372番は里から難波津までの道中、「荒し男」として振る舞っていたが、馬が立ち止まったタイミングで見送ってくれた人たちの気持ちを思い出して無事の帰還を祈った、という「優し男」の心が伝わる歌。

橘の下吹く風のかぐはしき 筑波の山を恋ひずあらめかも 万4371
 右の一首は助丁占部広方
*橘の花の下を吹き抜ける風がかぐわしい筑波山を恋しく思い出す。

足柄の み坂給へり
かへり見ず 我れは越え行く
荒し男も 立しやはばかる
不破の関 越えて我は行く
馬の爪 筑紫の崎に
留まり居て 我れは斎はむ
諸は 幸くと申す
帰り来までに 万4372
 右の一首は、倭文部可良麻呂
*足柄の坂も、不破の関も私はずんずんと進むのだ。でも筑紫の崎で馬が立ち止まったとき、見送ってくれた人を思い出し無事に帰還できるようにと祈りました。
二月の十四日、常陸の国の部領防人使大自目正七位上息長真人国島
進る歌の数十七首。
ただし、拙劣の歌は取り載せず。

【似顔絵サロン】占部 広方 うらべ の ひろかた ? - ? 奈良時代の防人。常陸国の出身。755年、防人の助丁として筑紫に派遣。
















倭文部 可良麻呂 しとりべ の からまろ ? - ? 奈良時代の防人。常陸国の出身。755年、防人として筑紫に派遣。
















息長 国島 おきながのくにしま ? - ? 奈良時代の官吏。常陸国の防人部領使。家持に4363番から4372番の防人の歌17首を進上した。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

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