万葉集巻第二十4395-4397番歌(竜田山見つつ越え來し)~アルケーを知りたい(1644)

▼防人の歌の間にときどき家持のインテルメッツオが入るけど、今回もそう。防人の歌の世界の流れに節目を入れる。なんと巧みな編集の技やろうか、と思ふ。防人の歌とのつながりに濃淡があるのがまた味わい深い。4395番は戻った時にどうなっているかを詠ったもの。防人の心情とつながる。4396番は、防人たちが集まっている様子を潮に乗る木屑と見立てているよう。4397番は妻を恋しがる防人の気持ちにインスパイアされたよう。

 独り竜田山の桜花を惜しむ歌一首
竜田山見つつ越え來し桜花 散りか過ぎなむ我が帰るとに 万4395
*竜田山を眺めながら越えて来た時に見た桜の花。私が帰る頃には散っているだろう。

 独り江水に浮かび漂ふ木屑を見、貝玉の依らぬことを怨恨みて作る歌一首
堀江より朝潮満ちに寄る木屑 貝にありせばつとにせましを 万4396
*堀江の方向から朝の潮流に乗って来る木屑。これが貝だったら土産にするのに。

 館の門に在りて、江南の美女を見て作る歌一首
見わたせば向つ峰の上の花 にほひ照りて立てるは愛しき誰が妻 万4397
 右の三首は、二月の十七日に兵部少輔大伴家持作る。
*見わたせば向こう側の峰に咲く花に照らされるように美女が立っているが、どなたの奥さんだろう。

【似顔絵サロン】県犬養 浄人 あがたいぬかい の きよひと ? - ? 奈良時代の貴族。755年、防人部領使として筑紫国まで防人を引率。大伴家持に防人たちの歌22首を進上。4384番から4394番までの11首が万葉集に収録。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

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