万葉集巻第二十4439番歌(松が枝の地に着くまで)~アルケーを知りたい(1667)

▼今回の歌は関係者が多いので、整理すると次です。水主内親王(天智天皇の娘)は体調不良が続いたので気にかけた元正天皇が侍女たちに「水主内親王に贈るため、雪を題にした歌を作って納めるように」と言われた。多くの侍女たちは作れなかったが石川命婦だけがこの歌を作って奏上した。というエピソードを大原今城が大伴家持に伝えたという話。雪降る寒い日に心温まる気づかいの作品。大原今城は石川命婦が家持の親戚であることを承知の上でこの歌と話を持ち出したと思ふ。

 冬の日に靫負の御井に幸す時に、内命婦石川朝臣、詔に応へて雪を賦する歌一首 諱は巴婆(おほば)といふ
松が枝の地に着くまで降る雪を 見ずてや妹が隠り居るらむ 万4439
*松の枝が地面につくほど降る雪を見ないで貴方様は閉じこもっているのでしょうか。
 時に、水主内親王寝膳安くあらずして、累日参りたまはず。
よりてこの日をもちて、太上天皇、侍嬬等に勅して曰はく、「水主内親王に遣らむために、雪を賦し歌を作りて奉献れ」とのりたまふ。
ここに、もろもろの命婦等、歌を作るに堪へずして、この石川命婦のみ独りこの歌を作りて奏す。
右の件の四首は、上総の国の大掾正六位上大原真人今城伝誦してしか云ふ。年月未詳。

【似顔絵サロン】水主内親王/水主皇女 みぬしのひめみ ? - 737天平9年9月22日 天智天皇の皇女。















石川 内命婦/命婦 いしかわ の うちみょうぶ ? - ? 奈良時代の女性。大伴安麻呂の妻。子が大伴坂上郎女、大伴稲公。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20


コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第十2219-2222番歌(夕さらずかはづ鳴くなる)~アルケーを知りたい(1477)

万葉集巻第十八4070-4072番歌(一本のなでしこ植ゑし)~アルケーを知りたい(1535)

万葉集巻第十八4093-4097番歌(ますらをの心思ほゆ)~アルケーを知りたい(1541)