万葉集巻第二十4509-4510番歌(延ぶ葛の絶えず偲はむ)~アルケーを知りたい(1702)
▼聖武天皇の没後2年。大中臣清麻呂の家に集まった大原今城、甘南備伊香、家持が聖武天皇を偲ぶ歌を詠んだ五首のうちの最後の二首。4509番は、聖武天皇がよく眺めていた野辺には、ここだったと分かるように囲いをしたいと家持が詠う。ここを御覧になっていたのだ、と。次の4510番はこれを受けて、伊香が高円の野辺を見ると泣けてきます、と和して締めくくる。▼起承転結モデルでこの五首を見ると、起承転承結になって収まっている。4506番が起、4507番が承、4508番が転。4509番は前の歌の「野辺延ふ葛」を借りた承、4510番が結。歌人たちは歌の進行状態を見ながら、自分の番でインプロビゼーションしている。
延ぶ葛の絶えず偲はむ大君の 見しし野辺には標結ふべし 万4509
右の一首は右中弁大伴宿禰家持。
*葛が広がるように絶えず偲びましょう。大君がご覧になっていた野辺には囲いをしておきましょう。
大君の継ぎて見すらし高円の 野辺見るごとに音のみし泣かゆ 万4510
右の一首は大蔵大輔甘南備伊香真人。
*大君がいつもご覧になっていた高円の野辺。見るたびに声を上げて泣きたくなります。
【似顔絵サロン】甘南備 伊香 かんなび の いかご ? - ? 奈良時代の皇族・貴族・歌人。万葉歌人。大伴家持・市原王・大原今城らと親交。757年と758年の歌が万葉集に収録。うちなびく春を近みかぬばたまの今夜の月夜霞みたるらむ 万4489
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20
コメント
コメントを投稿