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電力、ワット:アルケーを知りたい(452)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼電気の契約は30Aとか40Aなどから自由に選べる。アンペア数が高いと料金も高くなる。安くするとブレーカが落ちやすくなる。そこで、うっかり電気を使いすぎてブレーカを落としあたふたしないためのプログラムのアイディアを考えた。 ▼消費電力の式 P = V * I を活用する。 ▼理屈は、契約しているアンペア数に100Vをかけてブレーカが落ちないギリギリのワット数を出しておく。そこから、使用中の家電のワット数の合計を引き算すると、あとどれくらい電力が使えるかが分かる、というもの。 契約アンペア数: 40 冷蔵庫などいつも使う家電のワット数合計: 1000 使える電力は: 3000 W ▼コード my_watt = int(input('契約アンペア数: '))*100 regular_watt = int(input('冷蔵庫などいつも使う家電のワット数合計: ')) print('使える電力は:', my_watt - regular_watt, 'W') ▼このアプリには欠点がある。冷蔵庫、エアコン、炊飯器、ドライヤー、乾燥機などいつも使う家電のワット数合計を知らないと、使える電力がどれくらいかが分からない、という点だ。上の例でいつも使う家電のワット数を1000にしたのは、冷蔵庫250W、エアコン660W、パソコン100Wをベースにしたから。何回もブレーカを落とした経験から言うと、電気湯沸かし、ドライヤー、レンジ、炊飯器を使うときには気を付けるほうが良い。 ▼今日の人物:単位ワットのもとになったワットさん。 ジェームズ・ワット  James Watt、1736 - 1819 国▽スコットランド 教育▽母親からホームティーチング。18歳のときロンドンに出て計測機器の製造技術を身につける。職業▽グラスゴー大学で天文学機器の調整技師、ボールトン・アンド・ワット商会の経営者。業績▽ ニューコメン型蒸気機関を改良 、 ボールトン・アンド・ワット商会で販売、産業革命の進展に寄与 。人脈▽ ジョゼフ・ブラック さん(友達の物理学者)、 マシュー・ボールトン さん(共同経営者)、 ジョン・ウィルキンソン さん(蒸気機関のシリンダーの製造を引き受けてくれた金属加工会社の社長)、 ジェイムズ・キ

フランス革命と科学者の関係:アルケーを知りたい(451)

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今回の話題は・・・閑話休題。 ▼ アンペール さん、 ラボアジェ さん、 デュポン さんには共通点がある。それは、 フランス革命で運命が変わった こと。 ▼ アンペール さんの場合:アンペールさんを教育していた父親はフランス革命に反対の立場。 その姿勢を崩さなかったため、 父親は ジャコバン派によって断頭台で処刑 された。この出来事があったのはアンペールさんが18歳のとき。ショックを受けたアンペールさんは1年以上、無気力状態に陥る。 ▼ ラボアジェ さんの場合:質量保存の法則を発見したフランスの化学者。裁判のときジャコバン派の裁判長は「共和国に化学者は不要である」と断じてその日のうちに 断頭台で処刑 された。友人の ラグランジュ さんは「彼の頭を切り落とすのは一瞬だが、彼と同じ頭脳を持つものが現れるには100年かかる」「なぜ私が残されたのかわからない」と嘆き一生苦しんだ。 ▼ デュポン さんの場合:デュポン社の創業者。デュポンさんは16歳のとき ラボアジェ さんから直接、火薬の製造技術を学んだ弟子。23歳のとき 父親がジャコバン派に逮捕・投獄 される(断頭台は免れる)。28歳のときデュポン一家はフランスに見切りをつけアメリカに移住。 アントワーヌ・ラヴォアジエ Antoine-Laurent de Lavoisier、1743 - 1794 エルテール・イレネー・デュポン Éleuthère Irénée du Pont、1771 - 1834  アンドレ=マリ・アンペール André-Marie Ampère、1775 - 1836 ▼今日の人物:ラボアジェさんの断頭台処刑にショックを受けたラグランジェさん。 ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ  Joseph-Louis Lagrange、1736 - 1813 国▽フランス。教育▽トリノ大学卒業。業績▽『解析力学』、フランス経度局の創設メンバー、メートル法の制定。評価▽数理物理学の基礎を作った。職業▽エコール・ポリテクニーク他の教授。人脈▽ オイラー 、 ラプラス 、 ダランベール 、 ラヴォアジエ 。弟子▽ マリー・アントワネット 、 ジョゼフ・フーリエ 、 シメオン・ドニ・ポアソン 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en

師匠・弟子・仲間のネットワーク:アルケーを知りたい(450)

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今回は・・・閑話休題。 ▼この数回、 電流・電圧・抵抗・熱 を見た。人との関係でいうと、 電流は アンペールさん、 電圧は ボルトさん、 抵抗は オームさん、 熱は ジュールさん 。 ▼時代の幅を見ると、ボルタ電池が1800年、アンペールの法則が1820年、オームの法則が1827年、ジュールの法則が1840年。ということは、 ボルタ電池が登場 してから、熱量 Q = 電流 I の2乗 ✖ 抵抗 R ✖ 時間 t   の ジュールの法則に至るまで40年の年月 がかかっている。 ▼40年の蓄積と発展が 中学理科では数ページに濃縮 されている。理科の教科書、恐るべし。 ▼国で見ると、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス。物理学者は国際ネットワークの中で仕事をしていたことが分かる。 ▼教育を見ると、家庭教育と学校が混在している。職業は大学の先生が4名中3名。 ▼師弟関係を見ると、はっきりしているのはオームさん。オームさんは ラングスドルフさんという 良き恩師に恵まれた人だ。だから今日の人物で紹介した。 ▼欲しいけど実現方法が分からないアプリ:人脈は、同時代の人を辿っても、師弟関係を辿っても、どちらも面白い人がつぎつぎに現れてくる。しかし、 どう整理すれば人脈の面白さを可視化できるのか 、まだその方法が見つかってない。Wikipedia式に人名を押すとリンク先に飛ぶ以上の方法がないものか。 ▼4名の名簿(生年順) アレッサンドロ・ボルタ  Alessandro Volta、1745 - 1827 国▽イタリア。教育▽不明。業績▽メタンガスの発見(1777、32歳)、世界初の化学電池を発明(1800、55歳)。職業▽物理学者、パヴィア大学で教授。人脈▽ルイージ・ガルヴァーニ、アンソニー・カーライル、ウィリアム・ニコルソン、ナポレオン・ボナパルトほか アンドレ=マリ・アンペール  André-Marie Ampère、1775 - 1836 国▽フランス。教育▽父親~フランス革命。呼称▽電磁気学の礎、電気・電流・電圧の語彙の創始者。業績▽アンペールの法則(1820、45歳)。職業▽物理学者、数学者、エコール・ポリテクニーク等で教授。人脈▽エルステッド、アボガドロ ゲオルク・ジーモン・オーム  Georg Simon Ohm、1789 - 1854 国▽ドイツ。教育▽エアランゲン

ジュール=レンツの法則:アルケーを知りたい(449)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼ジュール=レンツの法則は、 ジュールさんが1840年に英国王立協会で発表した法則 。ジュールの法則のこと。 ▼ 式: 熱量Q = 電流I の2乗 ✖ 抵抗R ✖ 時間t 式の心は、熱量が欲しかったら電流をガンガン上げれば良い。 注:しかし実際はそんな都合よくいかない。 ▼ジュールさんは、この式を見つけるまで ボルタ電池 を使ってモータ、電磁石、電流、熱の実験を繰り返していた。そして、電気エネルギーが熱エネルギーに変わる現象に興味を持ち、結果、この式を得た。 ▼今も理科実験室で行われているであろう「水にニクロム線を入れて電流を流して温度上昇を測る」という ド定番 の実験 はジュールさんが始めたものだ。私は中学生のとき、手が濡れる系の実験が好きではなかった。さらに、ニクロム線で温めた水の温度を測る、という誤差がたくさん出そうなやり方も気に食わなかった。実際に ジュールさんが行った実験は、中学生とは次元がまるで違う精密極まるものだった のに、それを知らなかった。中学の実験は、先達が行った実験を追体験する意味がある 。今だったら手が濡れるのが嫌とか誤差がどうのとかヘタレを言わずにきっちり手順を守ってやります。 ▼今日の人物: ジュールの法則を独自で見つけたロシアの物理学者レンツさん 。だから「ジュール=レンツの法則」と言われる。 ハインリヒ・レンツ (Heinrich Friedrich Emil Lenz, 1804 - 1865)ロシアの物理学者、化学者。エストニアのタルトゥ大学卒業。サンクトペテルブルク大学で教授。29歳でレンツの法則、 38歳でジュールの法則を発見 。 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/Emil_Lenz  

抵抗、オームの法則:アルケーを知りたい(448)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼電流、電圧そして今回の 抵抗 で電気回路の役者が揃った。 ▼ オームの法則 V = R * I R = V / I I = V / R ▼抵抗の計算 ・直列回路 R = R1 + R2 ・並列回路 1/R = 1/R1 + 1/R2  並列回路の抵抗計算に抵抗がある(笑) ▼抵抗値を決める要素 ・面積 抵抗は電熱線の 断面積に反比例 する ・長さ 抵抗は電熱線の 長さに比例 する ▼面積、長さ以外の要素 ・素材 抵抗の大きなものの例= ニクロム (ニッケルとクロムの合金)、小さなものの例= 銀 ・温度 高温になるほど抵抗が大きくなる ・スマホの充電コードの選び方  太く、短いもの ほど電気抵抗が少ないから早く充電できる ▼抵抗を2つ並列につないだ回路の抵抗値を計算するプログラム 抵抗1の大きさ: 3 抵抗2の大きさ: 2 この並列回路の抵抗は: 6/5 Ω 小数で表すと: 1.2 Ω ▼コード from fractions import Fraction R1 = int(input('抵抗1の大きさ:')) R2 = int(input('抵抗2の大きさ:')) R = Fraction(1, R1) + Fraction(1, R2) print('この並列回路の抵抗は:',Fraction(1, R),'Ω') print('小数で表すと:',float(Fraction(1, R)),'Ω') ▼分数計算は難度が上がる。Python標準ライブラリの fractionモジュール をインポートするひと手間が増える。上のコードはプログラミングに習熟した人が見ると突っ込みどころあり(しかない)だろう。自分でも、print()関数の中で細工をするのは嫌いだ。なのに面倒くさいからその場しのぎでやっている。 ▼今日の人物:オームの法則のもとになったオームさん。 ゲオルク・ジーモン・オーム (Georg Simon Ohm, 1789 - 1854)ドイツの物理学者。エアランゲン大学で博士。父は錠前師。師匠は数学者のカール・フォン・ラングスドルフさん。この師匠がオームさんに数学の勉強を独自で続けるようアドバイスした。数学力、実験力、発表力の3力を活か

電圧、ボルト:アルケーを知りたい(447)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼前回電流だったので今回は 電圧 。 回路の2点間の電位の差 。イメージが水圧と似ている。 ▼小学館国語辞典:でんあつ【電圧】電気が、電位の高い点からひくい点に流れるときの、二点の電位の差。 単位はボルト で、 記号は V 。 ▼電圧と電流の計算。それぞれの性質が分かっていれば間違わない。 ・電圧の計算: 勢いだけに出発点は元気いっぱい、最終点はゼロ 直接回路:出発点のV = V1 + V2 = 最終点のV' 並列回路:出発点のV = V1 = V2 = 最終点のV' ・電流の計算: 流れだけに出発点も最終点も同じ元気に変わりなし 直接回路:出発点のI = I1 = I2 = 最終点のI' 並列回路:出発点のI = I1 + I2 = 最終点のI' ▼今日の人物:電圧の単位ボルトの基になったボルタさん。 アレッサンドロ・ボルタ (Alessandro Volta、1745 - 1827)さん。コモ王立学院卒業。イタリアの物理学者。パヴィア大学の実験物理学の教授。31歳のときメタンガスを発見。生体電気を発見した ルイージ・ガルヴァーニ さんと同時代人。 55歳のときボルタ電池を発明 。以後、安定した電源として物理学者、化学者に愛用された。 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/Alessandro_Volta

キルヒホッフの第1法則:アルケーを知りたい(446)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼ キルヒホッフの第1法則 は「 回路の任意の点に流れ込む電流の総和と、流れ出る電流の総和は等しい 」というもの。 ▼設定:電流I1とI2がある点に流れ込む。その点からこんどは2つに別れた回路へ電流が出ていく回路。それぞれI3、I4とする。I1、I2、I3、I4 の間には、キルヒホッフの第1法則によりI1 + I2 = I3 + I4 の関係がある。 ▼いずれか3つの電流の値が分かっているとき、残りの一つの電流の値を求めるコードを作る、とする。 ▼まずユーザに値を入力してもらう必要があるから、 まず次のコード を考えた。 I1=float(input('I1の電流:')) I2=float(input('I2の電流:')) I3=float(input('I3の電流:')) I4=float(input('I4の電流:')) ▼ そしてハタと行き止まった 。 I1+I2 =I3+I4 であることは分かってる。だけど、ユーザがどの1つを求めたいのかが分からない。 こんなとき、どんなふうに書くとスマートなコードになるのだろう? 最初の4行のコードも同じことを繰り返していて、改善の余地ありそう。 ▼今日の人物:キルヒホッフの第1法則を編み出した グスタフ・キルヒホフ (Gustav Robert Kirchhoff, 1824 - 1887)さん。ドイツの物理学者。ケーニヒスベルク大学卒業。 ブンセン さんと一緒に分光器を発明。「黒体放射」の名付け親。弟子のひとりが マックス・プランク さん。 * アルケーを知りたい(89) 黒体放射 black body radiation https://gakuryokuup.blogspot.com/2021/06/89-black-body-radiation.html アルケーを知りたい(187) ノーベル物理学賞 1908年 ガブリエル・リップマンさん https://gakuryokuup.blogspot.com/2021/09/187-1908.html 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/