1801、バナジウム~デル・リオ(瑞):アルケーを知りたい(626)

今回は化学。

バナジウム。元素記号は V、原子番号23、vanadium。
名前の由来は、スカンジナビア神話の愛と美の女神バナジス vanadis。用途は製鉄の添加物。ダマスカス鋼にも微量に入っているという。

▼経緯~デル・リオのここが面白い
1801年、スペインの化学者デル・リオがメキシコの鉱石から新元素を発見。クロムに似た色という意味で パンクロミウム panchromium と命名。後に エリスロニウム erythronium に改名。

1802年、デル・リオは新しい元素を含むサンプルをフンボルトに渡し分析を依頼。フンボルトは分析をフランスの化学者コレット-デスコティルに依頼。

1806年、コレット-デスコティルがデル・リオが発見した物質はクロムと間違った判断をくだす。これをもとにフンボルトはデル・リオは新元素を発見していないと判断。

1830年、スウェーデンの化学者セフストレームが鋼の脆さの研究中に軟鉄から新元素を発見。色合いが鮮やかさから女神バナジス vanadisに因んで「バナジウム」と命名

1831年、ヴェーラー(→621、625)がエリスロニウムとバナジウムは同じものであることを発見

1867年、イギリスの化学者ロスコーが金属バナジウムの生成に成功。

アンドレス・マヌエル・デル・リオ Andrés Manuel Del Río 1764年11月10日 - 1849年3月23日 
スペインの化学者、鉱物学者 
【人物】メキシコの鉱業発展に貢献したスペイン生まれの化学者
【教育】1780(16) アルカ・ デ・エナレス大学で分析化学と冶金学を学び学士
 1782(18) 王立鉱山アカデミーに入学。フランス、ドイツ、オーストリア、イギリスに留学。
【職業】1794-1849(30-85) スペインの鉱山学者エルヤルの紹介でスペインがメキシコに設立した鉱山大学で鉱物学の創設教授。
1829-34(65-70) アメリカでフィラデルフィア地質学会の会長。
【業績】1801(37) バナジウムを発見(エリスロニウムと命名)

【ネットワーク】
エルヤル Fausto de Elhuyar y de Suvisa 1755年10月11日 - 1833年2月6日 スペインの化学者。▼1793年、エルフヤルがデル・リオにメキシコの鉱山大学の教授職を提供。1829年、メキシコがスペインから独立、メキシコ政府はエルヤルを国外追放。これに怒ってデル・リオがフィラデルフィアに亡命。

フンボルト Alexander von Humboldt 1769年9月14日 - 1859年5月6日 ポーランドの地理学者。▼デル・リオから預かったサンプルの分析をコレット-デスコティルに依頼。デスコティルはクロムと誤認。その結果を受けてデル・リオは新元素の発見をしていないと結論づける。後になってデル・リオはフンボルトの過ちを非難

コレット-デスコティル Hippolyte-Victor Collet-Descotils 1773年11月21日 - 1815年12月6日 フランスの化学者。▼1806(33) デル・リオのエリスロニウムをクロムと誤認。

セフストレーム Nils Gabriel Sefström 1787年6月2日 - 1845年11月30日 スウェーデンの化学者。ベルセリウスの弟子。▼1830(43)バナジウムを発見。

ロスコー Henry Enfield Roscoe 1833年1月7日 - 1915年12月18日 イギリスの化学者。▼1867(34) 金属バナジウムを生成。

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〔参考〕
『理科年表2022』
https://en.wikipedia.org/wiki/Andr%C3%A9s_Manuel_del_R%C3%ADo

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