1827、ブラウン運動~ブラウン(独):アルケーを知りたい(623)

今回は物理学。

ブラウン運動。液体や気体中に浮遊する微粒子が、不規則に運動する現象。

▼ブラウンのここがすごい:4年にわたるオーストラリア周航と植物採集というマクロな活動。一方、花粉から出た微粒子の動きを顕微鏡で観察するというミクロな活動。ミクロとマクロの両方をやれるアタマの作りがすごい。収集した標本を分類・整理・保管・展示するという作業をミクロとマクロの間とすれば、ブラウンはミクロからマクロまで隙間なく手がけたわけだから、それもまたすごい。にしても、バンクスもブラウンもイギリスの収集癖がもろに出ている人たち。日本ではどういう人たちだろう。

▼経緯。
BC60年、ローマの詩人で哲学者のルクレティウスが科学詩『物事の性質について』で塵粒子の不規則な運動(ブラウン運動)について記述。
1785年、イギリスの化学者インゲンハウスがアルコールの表面での石炭粉塵粒子の不規則な動き(ブラウン運動)を説明。
1827年、ブラウンが『植物の花粉に含まれている微粒子について』を発表。
1905年、アインシュタインが花粉粒子を水分子が動かすモデルを作り論文で発表。
1906年、スモルコウスキが確率の理論を使ってブラウン運動を説明。
1908年、ペランがブラウン運動に関する精密な実験を行い分子理論を実証(ノーベル物理学賞)。

ロバート・ブラウン Robert Brown 1773年12月21日 - 1858年6月10日 
スコットランドの植物学者 
【人物】父親はスコットランド聖公会の牧師。母親は長老派教会の牧師の娘。
【教育】1793(20) エジンバラ大学医学部を中退。
【職業】1795(22) イギリス海軍で外科医助手。
1810-20(37-47) バンクス卿の司書。
1820(47) バンクス卿の図書館と植物標本館を相続。
1827(54) バンクス卿の植物標本を大英博物館に移し、バンクシアン植物コレクションの管理者。
1837-58(64-85) 大英博物館で新設された植物部門で管理人。
【業績】
1801-05(28-32) フリンダース船長率いるイギリス海軍のオーストラリア遠征隊に植物学者として加わり科学標本を収集。
1827(54) 水面に浮かべたクラーキア・プルケラという植物の花粉粒を顕微鏡で観察中、花粉の中から出てきた微粒子が不規則に動く様子を発見、論文『植物の花粉に含まれている微粒子について』で発表。
1839(66) コプリ・メダル受賞。

【ネットワーク】
ルクレティウス Titus Lucretius Carus BC99 - BC55 ローマの詩人、哲学者。▼BC60(39)、科学詩『物事の性質について』で塵粒子のブラウン運動を記述。

インゲンハウス Jan Ingenhousz 1730年12月8日 - 1799年9月7日 オランダ生まれイギリスの生物学者、化学者。▼1785(55) アルコールの表面での石炭粉塵粒子の不規則な動きを説明。

バンクス  Joseph Banks 1743年2月2日 - 1820年6月19日 イギリスの植物学者。ジェームズ・クックの第一回航海(1768-71)に同行。1778(35)から41年間王立協会会長。▼1801(58) オーストラリア遠征を後援。ブラウンを植物学者としてメンバーに加える。

フリンダース Matthew Flinders 1774年3月16日 - 1814年7月19日 イギリスの航海士、地図製作者。1801-10(27-36) イギリス海軍のHMS Investigator号で初めてオーストラリアを一周した船長。1814(40) イギリス帰国後に発表した『A Voyage to Terra Australis』でオーストラリアと呼んだ最初の人。それまではニューホランドと呼ばれていた。▼フリンダースは、ブラウンが参加したオーストラリア探検隊の船長。

アインシュタイン Albert Einstein 1879年3月14日 - 1955年4月18日 ドイツ生まれの理論物理学者。▼1905(26) ブラウン運動の謎を解明する論文を発表。

スモルコウスキ Marian Smoluchowski 1872年5月28日 - 1917年9月5日 ポーランドの物理学者。統計物理学のパイオニア。▼1906(34) ブラウン運動を確率の理論を使って説明。

ペラン Jean Baptiste Perrin 1870年9月30日 - 1942年4月17日 フランスの物理学者。▼液体中に浮遊する微粒子のブラウン運動(沈降平衡) の現象に関するアインシュタインの説明を検証し、物質の原子的性質を確認。1926(56) ノーベル物理学賞受賞(物質の不連続的構造に関する研究、特に沈殿平衡についての発見)

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〔参考〕
『理科年表2022』
https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Brown_(botanist,_born_1773)

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