万葉集巻第九1720‐1725番歌(馬並めて打ち群れ越え来)~アルケーを知りたい(1417)
▼吉野川を詠う三首。1720の「馬並めて」は好きな言葉。なぜかというと馬を並べている姿が絵になるから。次の二つの歌は否定形の言葉「飽かなく」「見ず」が入っているのに、良い感じで伝わる。これは、上手な否定形の使い方をしているからに違いない、と思ふ。1723と1724は「AだからB」型で、読んで?となる捻りのない表現が好き。
元仁が歌三首
馬並めて打ち群れ越え来今日見つる 吉野の川をいつかへり見む 万1720
*仲間と馬を並べてやってきて今日見た吉野の川。次はいつ見られるだろうか。
苦しくも暮れゆく日かも吉野川 清き川原を見れど飽かなくに 万1721
*残念ながら日が暮れていく。吉野川の清い川原はいつまで見ても飽きないのに。
吉野川川波高み滝の浦を 見ずかなりなむ恋しけまくに 万1722
*吉野川の川波が高いので滝の浦を見ないままになりそう。そうなると後で恋しくなるでしょう。
絹が歌一首
かはづ鳴く六田の川の川楊の ねもころ見れど飽かぬ川かも 万1723
*カエルが鳴く六田川。いくら眺めても見飽きない川です。
島足が歌一首
見まく欲り来しくもしるく吉野川 音のさやけさ見るにともしく 万1724
*吉野川を見たくてやって来ました。川の流れる音のさわやかなこと。ますます心惹かれます。
麻呂が歌一首
いにしへの賢しき人の遊びけむ 吉野の川原見れど飽かぬかも 万1725
右は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。
*昔の賢人たちがレジャーに来たという吉野の川原は、いくら見ても見飽きることがありません。
【似顔絵サロン】元仁 がんにん ? - ? 万葉の歌人・法師・学者。万1720
絹 きぬ ? - ? 万葉の歌人。万1723
島足 しまたり ? - ? 万葉の歌人。万1724
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=9
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