万葉集巻第十八4113-4115番歌(さ百合花ゆりも逢はむと)~アルケーを知りたい(1546)

▼今回は、越中に赴任して五年になる家持が都で待っている妻を思い出す長歌と短歌。4114番の「笑まひのにほひ」という表現がよき。

 庭中の花を見て作る歌一首 幷せて短歌
大君の 遠の朝廷と
任きたまふ 官のまにま
み雪降る 越に下り來
あらたまの 年の五年
敷栲の 手枕まかず
紐解かず 丸寝をすれば
いぶせみと 心なぐさに
なでしこを やどに蒔き生ほし
夏の野の さ百合引き植ゑて
咲く花を 出で見るごとに
なでしこが その花妻に
さ百合花 ゆりも逢はむと
慰むる 心しなくは
天離る 鄙に一日も
あるべくもあれや 万4113
*越中に来てはや五年。気持ちがふさぐので、気晴らしに庭に撫子や百合を植えました。咲いた花を見ていると、都で私を待っている妻に早く逢いたい。

 反歌二首
なでしこが花見るごとに娘子らが 笑まひのにほひ思ほゆるかも 万4114
*撫子の花を見るたびに娘子の笑顔が思い出されてならない。

さ百合花ゆりも逢はむと下延ふる 心しなくは今日も経めやも 万4115
 同じ閏の五月の二十六日に、大伴宿禰家持作る。
*百合の花の名のように後(ゆり)で逢える楽しみなくして、どうして今日を過ごせるものか。

【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:船王 ふねおう/ふねのおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族。舎人親王の子。764年、藤原仲麻呂の乱では加担しなかったものの隠岐国へ流罪。眉のごと雲居に見ゆる阿波の山かけて漕ぐ船泊知らずも 万998
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18

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