万葉集巻第十八4116-4118番歌(去年の秋相見しまにま)~アルケーを知りたい(1547)

▼広繩が報告書をもって都に行き、戻ってきたので、再会の喜びを詠った家持の長歌と短歌。長歌の中にある「にふぶに笑みて」が印象的な表現。にこにこ微笑んで、という意味のようだ。前年の秋に出発し、翌年5月に戻るまでの間、都に滞在しているうちに広繩は都風になったようで、その印象を家持は「面やめづらし都方人」と詠っている。「男子、三日会わざれば刮目して見よ」を思い出しました。

 国の掾久米朝臣広繩、天平二十年をもちて朝集使に付きて今日に入る。
その事畢りて、天平感宝元年の閏の五月の二十七日に、本任に還り至る。
よりて、長官が館にして、詩酒の宴を設けて楽飲す。
時に、主人守大伴宿禰家持が作る歌一首 幷せて短歌
大君の 任きのまにまに
取り持ちて 仕ふる国の
年の内の 事かたね持ち
玉桙の 道に出で立ち
岩根踏み 山越え野行き
都辺に 参ゐし我が背を
あらたまの 年行き返り
月重ね 見ぬ日さまねみ
恋ふるそら 安くしあらねば
ほととぎす 来鳴く五月の
あやめぐさ 蓬かづらき
酒みづき 遊びなぐれど
射水川 雪消溢りて
行く水の いや増しにのみ
鶴が鳴く 奈呉江の菅の
ねもころに 思ひ結ばれ
嘆きつつ 我が待つ君が
事終り 帰り罷りて
夏の野の さ百合の花の
花笑みに にふぶに笑みて
逢はしたる 今日を始めて
鏡なす かくし常見む
面変りせず 万4116
*貴方様の長い出張の間、お目にかかれず逢いたいと思っておりました。無事にお帰りになって笑顔を見ることができました。これからはしょっちゅう逢いましょう。

 反歌二首
去年の秋相見しまにま今日見れば 面やめづらし都方人 万4117
*去年の秋にお目にかかって以来、今日お姿を見ると都の人の面持ちですね。

かくしても相見るものを少なくも 年月経れば恋しけれや 万4118
*こうやってまたお目にかかれるものなんですが、お目にかかれない間の年月の恋しさはちょっとやそっとじゃありませんでした。

【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:三方王 みかたおう ? - ? 奈良時代の皇族。舎人親王の孫。家持と親交のある万葉歌人。764年、藤原仲麻呂の乱の後、位階剥奪。み雪降る冬は今日のみうぐひすの鳴かむ春へは明日にしあるらし 万4488
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18

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