万葉集巻第十八4122-4124番歌(我が欲りし雨は降り来ぬ)~アルケーを知りたい(1549)

▼5月6日から田んぼに雨が降らず干ばつの心配が出ていたところ6月1日に雨雲が現れ、6月4日には久しぶりの雨になった。今回は、百姓の田んぼを見る家持が、長歌で心配、短歌で期待、もうひとつの短歌で安心を詠った三連作。

 天平感宝元年の閏の五月の六日より以来、小旱を起こし、百姓の田畝やくやくに凋む色あり。
六月の朔日に至りて、たちまちに雨雲の気を見る。
よりて作る雲の歌一首 短歌一絶
天皇の 敷きます国の
天の下 四方の道には
馬の爪 い尽くす極み
船舳の い果つるまでに
いにしへよ 今のをつつに
万調 奉るつかさと
作りたる その生業を
雨降らず 日の重なれば
植ゑし田も 蒔きし畑も
朝ごとに 凋み枯れゆく
そを見れば 心を痛み
みどり子の 乳乞ふがごとく
天つ水 仰ぎてぞ待つ
あしひきの 山のたをりに
この見ゆる 天の白雲
海神の 沖つ宮辺に
立ちわたり との曇りあひて
雨も賜はね 万4122
*雨が降らない日が続き、田畑が枯れかけて心を痛めていたところ、空に雲が現れました。雨を降らせてください。

 反歌一首
この見ゆる雲はびこりてとの曇り 雨も降らぬか心足らひに 万4123
 右の二首は、六月の一日の晩頭に、守大伴宿禰家持作る。
*見える限り空を雲が覆っています。満足するまで雨を降らせてください。

 雨落るを賀く歌一首
我が欲りし雨は降り来ぬ かくしあらば言挙げせずとも年は栄えむ 万4124
 右の一首は、同じき月の四日に、大伴宿禰家持作る。
*私たちが待ち望んでいた雨が降ってきました。おかげで言挙げしなくて今年は豊作でしょう。

【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:藤原 巨勢麻呂 ふじわら の こせまろ ? -  764 奈良時代の貴族。仲麻呂側だったため、官軍により斬殺。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18

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