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電気量の単位、クーロンC:アルケーを知りたい(478)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼電気料と電気量。音は一緒。だけど中身が全然違う。電気料は現実にお金の請求と支払いが発生する話なので、測り方や計算式がはっきりと定められている。しかし、今回は後者の話。概念的な話とデータが混在している。1600年代に 琥珀を擦るとものを引きつけるのはなぜか? から始まって、以来数百年にわたって多くの仮説と実験が重ねられた歴史がある。 ▼中高生の勉強法で大事なのは「こういう形で試験に出る。だからこういう解き方をする」という作法を身につけることだ。脇道にそれると危険である。例えば、電子と陽子の持つ電気量は等しいのに、質量は1:1800である。これはどういうこと?などと考え始めると危ない。そういうことを考えるのは中高を終えてからで良い(笑)。で、以下、電気量のお勉強。 ▼電気量は電荷量ともいう。平尾物理では「電荷によってもたらされる電気的な効果の大きさを示す量」とある。また、電荷とは「電気的な現象の根源を表す概念」。根源の話だ。では電荷を持つのは誰か? ▼電荷を持つものに電子と陽子がある。 電子1個が持つ電気量(電気素量)は、-1.602✖10のマイナス19乗である。めちゃ小さい。 陽子1個が持つ電気量(電気素量)は、+1.602✖10のマイナス19乗である。電子との違いは符号が+であること。 ▼以上が前段。今回の話であるクーロンに進もう。 計量単位令では 電気量の計量単位 は「 クーロン 」になっている。定義は「 一秒間に一アンペアの直流の電流によって運ばれる電気量 」である。(計量単位令、別表第一、第二条関係三十四で定義されている電気量) 〔C〕= 〔A・s〕 ってこと。 ▼アンペアはSI基本単位だ。定義は「電気素量を十の十九乗分の一・六〇二一七六六三四クーロンとすることによって定まる電流」である(計量単位令、別表第一、第二条関係四で定義されている電流) ▼今日の人物 クーロンの単位のもとになったフランスの物理学者 シャルル・ド・クーロン (Charles de Coulomb 1736 - 1806) 教育▽メジエール王立工学学校 職業▽フランス陸軍でエンジニア 実績▽49歳のとき ねじり天秤を開発しクーロンの法則を発見  人脈▽キャヴェンディッシュさん(クーロンさんより先にクーロンの法則を発見していた英の物理学者。科学者の中で一番の金持

熱学の迷路~用語のごちゃつきを愚痴る:アルケーを知りたい(477)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼ 熱学はムズイ 。その理由のひとつは、 用語と単位の関係が込み入っている ことにある。用語と単位の関係は1対1であって欲しいのに、 1対n になっている。分かっていればどうということはないのだろうけど、これから学ぶ人にとっては不親切である。 ▼どんな用語があるかというと、平尾物理(つまり高校物理)では、熱量、熱容量、比熱が出てくる。単位は熱量がJ、熱容量がJ/K、比熱がJ/(kg・K)である。ここまではよいとして、計量単位令と突き合わせていくと・・・ ▼込み入り、その1 計量単位令では熱量について、計量単位はジュールJ 又はワット秒W・s、定義は一ジュールの仕事に相当する熱量・・・① としている。 物理量と単位が1対1ではない ことに戸惑う。 ▼込み入り、その2 平尾物理の巻末資料では、ジュールが表す物理量は、エネルギー、仕事、熱量、電気量であり、 物理量と名称が1対1ではない ことに戸惑う。単位も J = N・m = kg・m2/s2 = W・s = C・V と複数出てくる。 異なる単位同士が = でつながれている ことに戸惑う。 ▼込み入り、その3 用語の問題。計量単位令にある比熱容量が、私が参照している平尾物理にはなくて、熱容量と比熱が載っている。 計量単位令に熱容量と比熱はない 。しかし、単位を見れば、比熱容量と比熱は同じことを言っていることが分かる。 【比熱容量】ジュール毎キログラム毎ケルビン J/(kg・K) 又はジュール毎キログラム毎度 J/(kg・℃):一キログラムの物質の温度を一ケルビン上げるのに要する熱量が一ジュールであるときの比熱容量・・・② ▼込み入り、その4 平尾物理では、 熱容量の単位はジュール毎ケルビンJ/K と示されている。計量単位令にもジュール毎ケルビンがある。けど、それは エントロピーの単位 として出ている・・・③ ▼① 計量単位令、別表第一、第二条関係三十 ② 計量単位令、別表第一、第二条関係三十二 ③ 計量単位令、別表第一、第二条関係三十三 ▼ところで、運動や食事ではカロリーを使う。カロリーは、計量単位令の別表第六(第五条関係)「特殊の計量」の十三で「人若しくは動物が摂取する物の熱量又は人若しくは動物が代謝により消費する熱量の計量」の項に位置づけられている。計量単位はカロリー。定義はジュール又はワ

仕事の単位、ジュールJ又はワット秒W・s:アルケーを知りたい(476)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼今回は 仕事 の単位。日常の仕事の意味で捉えようとすると頭が混乱するから、心構えが必要(笑)。 計量単位令、別表第一、第二条関係二十六で定義されている仕事 ジュール又はワット秒 : 一ニュートンの力がその力の方向に物体を一メートル動かすときの仕事 ▼中学理科: 仕事の単位はJ (ジュール)である。1〔J〕 = 1〔N〕 ✖ 1〔m〕 平尾の高校物理:仕事と力学的エネルギーの単位はともにジュール〔J〕である。1J =1N・m = 1kg・m2/s2 ▼前回やったように1Nは0.1kg重だから、 100gの物体を1m動かすと1Jに相当 する。 1kgのダンベルを水平に1m押し出すと10Jの仕事になる。戻すとさらに10J。往復で20Jの仕事。 ▼今日の人物 すでにジュールさん(425回)、ジュールさんと共同研究したケルビン卿ウィリアム・トムソンさん(456)、ワットさん(452回)、ワットさんと一緒に会社を経営したマシュー・ボールトンさん(453回)、その会社のエンジニアだったウィリアム・マードックさん(468回)にはご登場いただいている。 ▼そこで今回は、ジュールさんやヘルムホルツさんと並ぶエネルギー保存則の発見者、ドイツの物理学者をご紹介する。 ユリウス・ロベルト・フォン・マイヤー さん(Julius Robert von Mayer 1814 - 1878) 教育▽チュービンゲン大学で博士(医学) 職業▽オランダ船の船医 実績▽ 熱の仕事当量の算出方法を明らかにした  人脈▽ジュールさん(熱の仕事当量を実験から算出、公表)、ヘルムホルツさん(エネルギー保存の法則を最初に発表したのはマイヤーさんだと語った)、リービッヒさん(マイヤーさんの論文を自分の雑誌で取り上げた)、ジョン・ティンダルさん(英の物理学者。講演でマイヤーさんを紹介、英国での知名度を上げた) 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/Julius_von_Mayer

圧力の単位、パスカルPa又はニュートン毎平方メートルN/m2:アルケーを知りたい(475)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼今回は 圧力 の単位Pa。 圧力とは単位面積にかかる力である。 ▼日常のどういった場面で圧力の単位を使うか、探してみたところ例えば次があった。 タイヤの空気圧 (私の自転車用の空気入れに付いているメーターは単位がBARとPSI表示になっていてPaは載ってない)、 ダイバーが使う空気ボンベの残圧計 (私はダイビングはやらないので実機は知らないけど、Webで調べて限りではKPaやBAR)、 プロパンガスボンベのガス圧 (KPaが浸透)など。 ここでも単位がいろいろあって面白い。ところで気圧は昔は ミリバール と言っていた。ミリバールとヘクトパスカルを同じ値にしてくれたのは変換の手間が要らないのでありがたい。 ▼力については、次 ・質量が1kgの物体に働く重力の大きさは9.8Nである。 ・1Nは0.1kgf(kg重)である。 ▼計量単位令、別表第一、第二条関係二十二で定義されている圧力 パスカル又はニュートン毎平方メートル :一平方メートルにつき一ニュートンの圧力 ▼圧力の単位はPaである。 PaとN/m2の関係は、1Pa = 1 N/m2 である。 これは、1平米あたり0.1kgfということだから、手のひら(25平方センチとして)では感じられないくらいのものだ。 実用では、 パスカルの100倍のヘクトパスカルや1000倍のキロパスカルが用いられる。 ▼今日の人物 ニュートンさん、パスカルさん、トリチェリさんらはご登場済みなので、もっと時代を遡ってみた。宇宙はエーテルで満たされていると考えた古代ギリシャの哲学者 アリストテレス さん(Aristotle BC384 – 322) 教育▽アテナイのアカデメイア 職業▽マケドニアの王立アカデミーで指導者、アテナイでリュケイオン開設 実績▽ 万学の祖 、 フィロソフィアの始祖  人脈▽ プラトン (師匠)、アレキサンダー大王(弟子) 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/Aristotle

力の単位、ニュートン N = kg・m/s2:アルケーを知りたい(474)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼今回は力学の原点、力の単位について。 高校物理では 自然界の4つの力 を学ぶ。 重力 、 電磁気力 、 強い力 、 弱い力 である。馴染みがあるのは重力(源泉は質量)と電磁気力(源泉は電荷)の二つだ。 ▼力はゲージ粒子によって媒介されると考えられており、 重力のゲージ粒子は重力子 とされている。しかし、 重力子はまだ見つかっていない 。アルケーが解明されていない未踏の世界が力という日常現象の先にある・・・たまりません。 ▼計量単位令、別表第一、第二条関係二十で定義されている力 ニュートン:一キログラムの物体に働くとき、その方向に一メートル毎秒毎秒の加速度を与える力 ▼今日の人物 ニュートンさんが活躍した100年後に登場した「フランスのニュートン」。 ピエール=シモン・ラプラスさん(Pierre-Simon Laplace 1749 - 1827) 教育▽カーン大学 職業▽エコールミリテールで教員。フランス科学アカデミーの会員 実績▽天体力学。ラプラスの悪魔。長さの尺度として地球の北極点から赤道までの子午線弧長を測量し、その1000万分の1を基準とするメートル定義の基礎を作った。 人脈▽ダランベールさん(数学の指導者)、ラヴォワジエさん(共同研究者)、ナポレオン・ボナパルトさん(教え子)。 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/Pierre-Simon_Laplace

周波数の単位、ヘルツ Hz:アルケーを知りたい(473)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼今回は 周波数の単位 について。周波数とは何だっけ?を確認した後、単位の定義、周波数がとても低いものの例とたいへん高いものの例を見る。 ▼ 周波数とは 、電波や交流電流などが、一秒間に何回のわりあいで向きをかえるかを表した数。単位はヘルツ。(小学館の例解学習国語辞典) ▼ ヘルツ:一秒間に一回の周波数 ( 計量単位令、別表第一、第二条関係十六で定義されている周波数 ) ▼ 周波数が最高に低いもの は、3Hz–300Hz。極超長波ELF(extremely low frequency)という。 3Hzの波長は いったいどれくらいのものだろう? 前に作った周波数-波長計算プログラムで計算すると・・・いやいや光速の30万kmを3で割ればよいのだから、 約10万km 。波の山から山まで(あるいは谷から谷まで)が10万kmなんて、人の感覚からはぶち離れている。 ▼周波数の最高に高いものは、ガンマ線。周波数は 3✖10の7乗テラHz 以上。 波長は0.01nm以下 。これまた人の感覚からぶち離れている。 ▼今日の人物 単位Hzの基になったドイツの物理学者 ハインリヒ・ルドルフ・ヘルツ さん(Heinrich Rudolf Hertz 1857 - 1894) 教育▽ベルリン大学で博士 職業▽カールスルーエ工科大学などで教授 実績▽ 30歳のとき電磁波を発見 、光電効果も発見 人脈▽キルヒホフさん(指導教員)、ヘルムホルツさん(指導教員)、フィリップ・レーナルトさん(弟子)、グスタフ・ヘルツさん(甥。物理学者。1925年にノーベル物理学賞を受賞) 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/Heinrich_Hertz

加速度の単位、メートル毎秒毎秒 m/s2:アルケーを知りたい(472)

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今回の話題は(A)物理学。 ▼今回は加速度の単位を調べる。 加速度: 時間とともに速度が変化する運動において、その変化率 時間Δtの間に速度がΔv変化するときの加速度a:  a = Δv / Δt  (平尾物理 p.24) ▼計量単位令、別表第一、第二条関係十五で定義されている加速度 メートル毎秒毎秒 : 一秒間に一メートル毎秒の加速度 ▼初速度 v0 で投げ上げられた物体の時刻 t での位置 y と速度の関係: y = v0*t - 1/2*(g*t**2) この式を使って打ち上げ花火が開く高さと時間をもとに打ち上げ初速を求めるプログラムが次。 花火が開く高さm: 500 打ち上げ後花火が開くまでの時間s: 3 花火の打ち上げ初速m/s: 181.37 ▼コード height = float(input('花火が開く高さm: ')) time = float(input('打ち上げ後花火が開くまでの時間s: ')) shosoku = round((height / time + 1/2*9.8*time), 2) print('花火の打ち上げ初速m/s:', shosoku) ▼今日の人物 Wikipediaの加速度の項で紹介されている数学者のひとり。詩人のワーズワースさんが「私の出会った最も魅力的な人物」と評したアイルランドの数学者、物理学者、 ウィリアム・ローワン・ハミルトン さん(William Rowan Hamilton 1805- 1865) 教育▽ダブリンのトリニティカレッジ 職業▽アンドリュース天文学の教授、ダンシンク天文台の所長 実績▽四元数と呼ばれる高次複素数の発見、ハミルトン力学(ニュートン力学の再定式化)、正二十面体の発明 人脈▽ジョン・ブリンクリーさん(アイルランド初の王立天文学者。ハミルトンさんの才能を認めて引き立てた指導者)、ジョン・ハーシェルさん(青写真を発明した英国の物理学者。ハミルトンさんの友人。ウィリアム・ハーシェルさんの息子)、ウィリアム・ワーズワース(詩人。ハミルトンさんの友人) 〔参考〕 有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。 平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Rowa