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1963、光検出モデル~グラウバー:アルケーを知りたい(798)

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今回は物理学。 ▼ 光検出モデル :Photodetection。具体的には、光センサーになって普及している。 ▼グラウバーのここが面白い:イグノーベル賞の授与式の「モップ係」を務めていた、というエピソードの持ち主。イグノーベル賞では祝福の意味で観客が受賞者に紙飛行機を投げる。その後片付けをする係をしていた、という話。ご自分がノーベル賞授賞式に出るときはさすがにモップ係を代わってもらったらしい。 ▼ ロイ・グラウバー  Roy Jay Glauber 1925年9月1日 - 2018年12月26日  アメリカの理論物理学者  【人物】ニューヨーク生まれ。ユダヤ人。父親は巡回セールスマン。 【教育/活動】 1941(16) ブロンクス科学高校の第一期生として卒業。ハーバード大学に進学。 1943-45(18-20) ロスアラモス国立研究所の最年少科学者の一人としてマンハッタン計画に参加。原子爆弾の臨界質量の計算に従事した。 1945(20) ハーバード大学に復学。 1946(21) ハーバード大学で学士。 1949(24) ハーバード大学で博士。指導教員は ジュリアン・シュウィンガー 。 1963(38) 光検出モデルを構築し、レーザー光や電球光など様々な種類の光の基本的な特性を説明 。光検出モデルは量子光学の分野で広く普及。 1967(42) 欧州原子核研究機構(CERN)で客員研究員。 2005( 80 ) ノーベル物理学賞受賞(光学コヒーレンスの量子論への貢献) 。 【ネットワーク】 ジュリアン・シュウィンガー  Julian Seymour Schwinger 1918年2月12日 - 1994年7月16日 アメリカの理論物理学者。1965(47) ノーベル物理学賞受賞(量子電磁力学の分野における基礎研究)。▼グラウバーの師匠。グラウバーはシュウィンガーに対して「彼の知識と信じられないほど有益な講義スタイルに感銘を受け、彼は教師の中でもユニークであり、理想的な論文指導者でもある」と感じた。 【似顔絵サロン】 〔参考〕 『理科年表2022』 https://en.wikipedia.org/wiki/Roy_J._Glauber

1962、X線天体発見~ロッシ:アルケーを知りたい(797)

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今回は物理学。 ▼ X線天体発見 :太陽の次に強いX線を放射するさそり座 X-1。 太陽系外で初めて発見されたX線源。 名前の由来は、最初に発見されたX線源であることから。 ▼ロッシのここが面白い:受け流し力、というか、対応力の高さがすごい。WWIIの時期、ファシスト党の政策のためイタリアに住めなくなり、デンマークに逃れる。ここではナチス党の脅威のため、英に逃れる。英ではドイツ軍の空爆が盛んになり、渡米。マンハッタン計画で専門性を発揮。WWIIの後、宇宙線の研究を行う過程でX線天体を発見する。外部環境の激変で居場所を変えながらも、一環して研究を続ける意志を持ち続けたところがすごい。 ▼ ブルーノ・ ロッシ  Bruno Benedetto Rossi 1905年4月13日 - 1993年11月21日  イタリア生まれの宇宙物理学者 【人物】父親は電気技師。ユダヤ人。 【教育/活動】 1927(22) ボローニャ大学で物理学博士。指導教員は キリノ・マヨラナ 。 1928-(23-) フィレンツェ大学で助教授。 1929(24) 最初の院生 ジュゼッペ・オッキアリーニ (22) が博士号を取得。 1932-(27-) パドヴァ大学で教授。 1938(33) イタリアの人種法施行に伴いデンマークに脱出。ニールス・ボーアの下で働く。英を経て渡米。 1939(34) シカゴ大学、コーネル大学で准教授。  WWIIの時期、フェルミに招かれてマンハッタン計画に参加。 1946-70(41-65) MITで教授。 1962( 57 ) リカルド・ジャコーニ らと ロケットを使ったX線観測中にさそり座X-1を発見 。 史上初めて太陽系外のX線天体発見 。 1974-80(69-75 )  パレルモ大学で教授。 【ネットワーク】 キリノ・マヨラナ  Quirino Majorana 1871年10月28日 - 1957年7月31日 イタリアの実験物理学者。 ローマ大学の物理学教授。▼ロッシの指導教員。 ジュセッペ・オキャリーニ  Giuseppe Occhialini 1907年12月5日 - 1993年12月30日 イタリアの物理学者。▼ロッシの弟子。 リカルド・ジャコーニ  Ricardo Giacconi 1931年10月6日 - 2018年12月9日 アメリカの宇宙物理学者

1962、ジョセフソン効果~ジョセフソン:アルケーを知りたい(796)

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今回は物理学。 ▼ ジョセフソン効果 :Josephson effect。2つの超伝導体の間に絶縁体を置く。絶縁体が十分に薄いと電流が流れる現象。 1962年、ケンブリッジ大学の大学院生ブライアン・ジョセフソンが理論的に説明。ベル研究所の アンダーソン とローウェルが実験で検証。 ▼ジョセフソンのここが面白い:20代で発見、30代でノーベル賞。超特急。 ▼ ブライアン・ジョセフソン  Brian David Josephson 1940年1月4日 -   イギリスの物理学者。 【人物】ウェールズ生まれ。 【教育/活動】 1960(20) ケンブリッジ大学で学士。 1962(22) トリニティ・カレッジでフェロー。 1964( 24 ) ケンブリッジ大学で物理学博士。「 超伝導体における非線形伝導 」 1965-66(25-26) イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でポスドク。 1967(27) キャヴェンディッシュ研究所で研究助手。 1970(30) NSFの資金を得てコーネル大学に留学。 1973( 33 ) ノーベル物理学賞受賞(トンネル接合を通過する超電流の性質、特にジョセフソン効果としてよく知られる普遍的現象の理論的予測) 。 1974-2007(34-67) ケンブリッジ大学で物理学教授。 【ネットワーク】 アルフレッド・ピパード  Alfred Brian Pippard 1920年9月7日 - 2008年9月21日 イギリスの物理学者 1971-82(51-62) キャベンディッシュ研究所で物理学教授。▼ジョセフソンの博士指導教員。 フィリップ・アンダーソン  Philip Warren Anderson 1923年12月13日 - 2020年3月29日 アメリカの物理学者。1977(54) ノーベル物理学賞受賞(磁性体と無秩序系の電子構造の理論的研究)。▼ジョセフソン効果を実験で 検証した。 江崎 玲於奈  えさき れおな 1925年3月12日 物理学者。▼1973(48) ノーベル物理学賞受賞(半導体内および超伝導体内の各々におけるトンネル効果の実験的発見)。ジョセフソンと同時受賞。 アイヴァー・ジェーバー  Ivar Giaever 1929年4月5日 -  アメリカの物理学者 ゼネラル・エレクトリック (GE) の研究所 1973(44) ノ

1960、ニュートリノ・ビーム法~レーダーマン:アルケーを知りたい(795)

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今回は物理学。 ▼ ニュートリノ・ビーム法 :レーダーマンがノーベル物理学賞を受賞した理由になった方法。 ▼レーダーマンのここが面白い:wikipediaに「レーダーマン氏は、ノーベル賞受賞者としては珍しく、シカゴ大学で物理学を専攻していない人々に物理学を教えることに自ら取り組んだ」とある。シカゴ大の教授は67歳から。68歳から物理学第一運動Physics Firstを開始。当時、アメリカの高校では最初に生物学を学ぶことになっており、そこに出てくる膨大な用語の記憶が高校生の理科学習の壁になっていた。そこで順番を変えて、数学と物理を最初に学んだ後、生物学や化学を学ぶ。Physics Firstは、そんな順番にしたほうが良くないか?という運動。はい、良いと思います。 ▼ レオン・レーダーマン  Leon Max Lederman 1922年7月15日 - 2018年10月3日  アメリカの実験物理学者 【人物】両親はウクライナ系ユダヤ人移民。父親は洗濯屋。 【教育/活動】 1943(21) ニューヨーク市立大学卒業。アメリカ陸軍に入隊。 1946(24) 陸軍を退役、コロンビア大学で物理学を専攻。 1951(29) コロンビア大学で博士。指導教員は ユージン・セオドア・ブース 。同大で教職。 1958(36) コロンビア大学でユージン・ヒギンズ物理学教授職。 1961-78(39-56) ネイビス研究所で所長。 1962( 40 ) 陽子加速器でミューニュートリノを発見。電子ニュートリノとμニュートリノが別ものと証明 。 1977(55) 底部クォークを発見。"Oops-Leon" と命名。 1978-88(56-66) フェルミ国立加速器研究所で所長。 1988( 66 ) ノーベル物理学賞受賞(ニュートリノビーム法、およびミューニュートリノの発見によるレプトンの二重構造の実証) 。 1989(67) コロンビア大学を定年で退職。シカゴ大学、イリノイ工科大学で教授。 1990(68) Physics First 運動 を開始。 1993(71) 『The God Particle(神がつくった究極の素粒子)』発表。ヒッグス粒子のこと。 2012(90) ヴァネヴァー・ブッシュ賞受賞。 【ネットワーク】 ユージン・セオドア・ブース・ジュニア  Eug

1960、超伝導体のトンネル効果を発見~ジェーバー:アルケーを知りたい(794)

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今回は物理学。 ▼ トンネル効果 :tunnelling effect。微細な領域で発生する現象で、人間は直接知覚できない。古典力学で説明できず、量子力学で扱う。半導体でトンネル効果を発見したのが江崎玲於奈、超伝導体でトンネル効果を発見したのがジェーバー。 ▼ジェーバーのここが面白い:90歳を超えても元気なところ。世界的な脱炭素キャンペーンに対して、CO2は植物にとっての食料、地上の生き物全体にとってなくてはならないもの、と主張しているところ。 ▼ アイヴァー・ジェーバー  Ivar Giaever 1929年4月5日 -   アメリカの物理学者 【人物】父親は薬剤師。ノルウェー生まれ。 【教育/活動】 1952(23) ノルウェー科学技術大学で機械工学士。 1953(24) ノルウェー陸軍で兵役。 1954(25) ルウェーからカナダに移住。ゼネラル・エレクトリック GE のカナダ部門に入社。 1956(27) 米NY州に移住。GEのエンジニアリング・コースで学ぶ。 1958(29) 米GEの企業研究開発センターに入社。レンセラー工科大学の博士課程に入る。同年、 江崎が半導体で電子トンネル効果を発見 。 1960( 31 ) 超伝導体でトンネル効果を発見 。 1964(35) レンセラー工科大学で博士。米国市民権を取得。 1969(40) 渡英、ケンブリッジ大学でフェロー。生物物理学を学ぶ。 1970(41) GEの研究開発センターに戻り固体表面におけるタンパク質分子の挙動を研究。 1973( 44 ) GEでクーリッジ研究員職。 ノーベル物理学賞受賞(半導体におけるトンネル効果の実験的発見) 。 1985(56) ノルウェー科学技術大学で名誉博士。 1988(59) GEを退職。NY州レンセラー工科大学で研究所教授。ノルウェーのオスロ大学で教授。 2022(93) 地球温暖化論・脱炭素政策を不適切なモデルに依存した新興宗教と呼び「気候危機は存在しない」と宣言。「CO2 is plant food, the basis of all life on Earth」「Climate policy must respect scientific and economic realities」とする。 【ネットワーク】 江崎 玲於奈  えさき れおな 1925年3月12日

1947、ホログラフィー~ガボール:アルケーを知りたい(793)

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今回は物理学。 ▼ ホログラフィー :holography。3次元像の記録写真であるホログラム hologram の製造技術。用途はクレジットカードや紙幣の偽造防止ほか。 ▼ガーボルのここが面白い:「未来は予測できないが、未来は発明できる。人間社会を形作る発明をするのは人間の能力である」という名言を残している。 ▼ ガーボル・デーネシュ  Gábor Dénes 1900年 6月5日 - 1979年 2月9日  イギリスの電気工学者・物理学者  【人物】オーストリア=ハンガリー帝国ブダペスト生まれ。ユダヤ人一家の長男。父親は鉱山会社の取締役。 【教育/活動】 1914-18(14-18) ハンガリー軍の砲兵として従軍。 1918(18-) ブダペスト工科大学、ベルリン工科大学で電子光学を学ぶ。 1927(27) ベルリン工科大学で博士。  Siemens & Halske AG に入社。高圧石英水銀ランプを発明。 1933(33) ナチス・ドイツから逃れて渡英。ブリティッシュ・トムソン・ヒューストン BTH で開発者。 1946(46) イギリス市民権を取得。 1947( 47 ) BTHで電子顕微鏡の解像度を向上させる研究の過程でホログラフィーを発明 。 1948(48) インペリアル・カレッジ・ロンドンに移籍。 1958-67(58-67) インペリアル・カレッジ・ロンドンで応用物理学の教授。 1967-(67) 退職後はインペリアル・カレッジ・ロンドンのシニア・リサーチ ・フェロー。イタリアのローマで過ごす。CBS研究所のゴールドマーク所長と共同研究。 1971( 71 ) ノーベル物理学賞受賞(ホログラフィーの発明) 。 【ネットワーク】 ピーター・ゴールドマーク  Peter Carl Goldmark 1906年12月2日 - 1977年12月7日 ハンガリー系アメリカのエンジニア。CBS研究所長。▼二人は共同して通信と表示の新方式を研究。 【似顔絵サロン】 〔参考〕 『理科年表2022』 https://en.wikipedia.org/wiki/Dennis_Gabor

1970、CCDセンサー(2/2)~ジョージ・スミス:アルケーを知りたい(792)

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今回は物理学。 ▼スミスのここが面白い:CCDの発明者にしてヨット乗り。活動のダイナミックさが素晴らしい。ボイルがパイロットで空に対し、スミスは海。 ▼ ジョージ・スミス  George Elwood Smith 1930年5月10日 -   アメリカの応用物理学者 【人物】NY州生まれ。 【教育/活動】 1948(18) 高校を卒業、アメリカ海軍に入隊。 1948-52(18-22) アメリカ海軍で航空写真、気象予報に携わる。朝鮮戦争にも従軍。 1952-55(22-25) ペンシルベニア大学で物理学を専攻。理学士。 1959(29) NSFとベル研の奨学金を得てシカゴ大学で博士。 1959-86(29-56) ベル研究所で ボイル のチームに入りレーザーと半導体デバイスを研究。  ヨットを購入、セーリングを楽​しむ。 1969( 39 ) ボイル と共同でCCDを発明 。 1983(53) 31フィートのサザンクロス号を製作。調整。 1986(56) ベル研究所を引退。 1986-2003(56-73) 妻とサザンクロス号で世界一周。 2009( 79 ) ノーベル物理学賞受賞(撮像半導体回路であるCCDセンサーの発明) 。 【ネットワーク】 岩間 和夫  いわま かずお 1919年2月7日 - 1982年8月24日 技術者・経営者。第4代ソニー社長。▼「CCDを使って5年以内に5万円のビデオカメラをつくる」と宣言。ソニーは1970年にCCDカメラの研究開発を開始、1978年にCCDカメラを開発。岩間の墓石にはCCDチップが埋め込まれている。 【似顔絵サロン】 〔参考〕 『理科年表2022』 https://en.wikipedia.org/wiki/George_E._Smith