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万葉集巻第二十4463-4464番歌(ほととぎすまづ鳴く朝明)~アルケーを知りたい(1678)

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▼家持は何かというとホトトギスを持ち出して詠っている。50首以上あるんとちゃう。4463番を見ると、どこからそんなこだわりが出て来るん?と思ふ。人のこだわりは人それぞれだから良いんだけど、ホトトギスが鳴きながら通り過ぎるんじゃなくて、通り過ぎないようにするにはどうすれば良いかとか、普通は考えないだろう(笑)。変な人だ、家持さんは。4464番は、気楽に話せる友達と飲み会をする日を楽しみにしつつ、ホトトギスを気にかけているという。ふむふむ、そうなんだ (笑) 。 ほととぎすまづ鳴く朝明いかにせば 我が門過ぎじ語り継ぐまで  万4463 *ホトトギスの朝の第一声。どうやれば我が家の門を通り過ぎないでいさせられるか。それが語り継がれるほどに。 ほととぎす懸けつつ君が松蔭に 紐解き放くる月近づきぬ  万4464  右の二首は、二十日に、 大伴宿禰家持興に依りて作る 。 *ホトトギスを気にしながら、貴方様が待つという松蔭で気分を解放して遊べる月が近づいています。 【似顔絵サロン】 興に依る大伴家持 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

万葉集巻第二十4460-4462番歌(堀江漕ぐ伊豆手の舟の)~アルケーを知りたい(1677)

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▼4460番は、伊豆メイドの舟は特長があったのだろうと思わせる。舟の漕ぎ手もさることながら、舟も大工の腕でルックスや性能が違っていたはず。4461番は、楫の音をフューチャーした歌。4462番も前の歌と同じく楫の音つながり。 楫を漕いでみたい。機会はないものか。昔、漕いだ記憶があるのだが、これは幻かも知れない。 堀江漕ぐ伊豆手の舟の楫つくめ 音しば立ちぬ水脈早みかも  万4460 *堀江を漕ぎ進めるメイドイン伊豆の舟。楫がきしむ音がしばしば聞こえるのは水の流れが早いからか。 堀江より水脈さかのぼる楫の音の 間なくぞ奈良は恋しかりける  万4461 *堀江から流れを遡る舟の楫の音が聞こえ続ける。奈良を いつも 恋しく思う私の気持ちのようだ。 舟競ふ堀江の川の水際に 来居つつ鳴くは都鳥かも  万4462 *漕ぎ競う舟ような音で堀江の川の水際で鳴いているのは、都鳥かも知れない。   右の三首は、江の辺にして作る。 【似顔絵サロン】 伊豆手の舟大工  ? - ? 奈良時代の船大工。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

万葉集巻第二十4457-4459番歌(葦刈りに堀江漕ぐなる)~アルケーを知りたい(1676)

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▼4457番の前書きと歌の関係がよく分からない。昔の和歌にはよくあること。だから気にしない。4457番は家持が馬国人の家の近くの植物を誉めている歌。木や草を誉めてどうするのかというと、これは馬国人に親しみの情を表しているのだろう。というのも続く4458番で馬国人が会話が楽しいと家持に返しているから。4459番は大原今城が前の歌を詠った日とは違う日に違う場所で詠んだ歌を大伴池主が声に出して読んだ歌。どういう関係なんだかさっぱり。でも歌の調子を見ると都の近くに住んでいる幸福感がにじみ出ているのが共通。  天平勝宝八歳丙申の二月の朔乙酉の二十四日戊申に、太上天皇、天皇、大后、河内の離宮に幸行し、経信壬子をもちて難波の宮に伝幸す。 三月の七日に、河内の国伎人の郷の 馬国人 の家にして宴する歌三首 住吉の松が根の下延へて 我が見る小野の草な刈りそね  万4457   右の一首は兵部少輔大伴宿禰家持。 *住吉の松の根が土深く延びているように、私が眺めるのを楽しみにしている小野の草は刈り取らないでくださいね。 にほ鳥の息長川は絶えぬとも 君に語らむ言尽きめやも  未詳 万4458   右の一首は主人散位寮の散位 馬史国人 。 *息長川が枯れることがあっても、貴方様に語りたい言葉が尽きることはありません。 葦刈りに堀江漕ぐなる楫の音は 大宮人の皆聞くまでに  万4459   右の一首は、式部丞大伴宿禰池主読む。 すなはち云はく「兵部大丞大原真人今城、先つ日に他し所にして読む歌ぞ」といふ。 *葦を刈るために堀江を進む舟の楫の音は、大宮人のみなさんに聞こえています。 【似顔絵サロン】 馬 国人  うま の くにひと/ときひと ? - ? 奈良時代の官人・歌人。王仁の後裔で、漢系渡来氏族。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

万葉集巻第二十4455-4456番歌(ますらをと思へるものを)~アルケーを知りたい(1675)

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▼4455番は、芹を摘んで贈りものにするときに添えた歌。 粋な振る舞いとはかくあるべし。4456番の返しを見ると、葛城王は純朴、 薩妙観はその上手を行く感じがした。歌の贈答勝負としては引き分けか。家持はニヤリとしながらこの二首を選んだのでは・・・。  天平元年の班田の時に、使の 葛城王 、山背の国より薩妙観命婦等の所に贈る歌一首  芹子の褁に副ふ あかねさす昼は田賜びてぬばたまの 夜のいとまに摘める芹これ  万4455 *昼間は班田収授の作業に追われていましたので、夜のすきま時間に摘んだ芹です、これは。   薩妙観命婦 が報へ贈る歌一首 ますらをと思へるものを大刀佩きて 可爾波の田居に芹ぞ摘みける  万4456   右の二首は、左大臣読みてしか云ふ。左大臣はこれ葛城王にして、後に橘の姓を賜はる *益荒男と思っておりましたのに、刀を腰につけたまま可爾波の田んぼに入って芹を積んでくださったとは、まあ。 【似顔絵サロン】 葛城王 =橘 諸兄 たちばな の もろえ 684 - 757 奈良時代の皇族・公卿。吉備真備と玄昉が政治を補佐。 薛妙観命婦  せちみょうかんのみょうぶ / 薩妙観 せちめうくわん/さつみょうかん ? - ? 奈良時代の女性歌人。 ほととぎすここに近くを来鳴きてよ過ぎなむ後に験あらめやも  万4438 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

万葉集巻第二十4454番歌(高山の巌に生ふる)~アルケーを知りたい(1674)

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▼4454番は、積もる雪の歌。700年の半ばころ(?)の、十一月の二十八日の話。今より寒冷だったようだ。詠うのは奈良麻呂。菅の根のねもころごろに、と「ね」の重複と「ころごろに」の響きが印象的な歌。  十一月の二十八日に、左大臣、兵部卿 橘奈良麻呂 朝臣が宅に集ひて宴する歌一首 高山の巌に生ふる菅の根の ねもころごろに降り置く白雪  万4454   右の一首は、左大臣作る。 *高山の岩に生えている菅の根のように、隅々まで降り積もった白雪であります。 【似顔絵サロン】 橘 奈良麻呂  たちばな の ならまろ 721 - 757 奈良時代の公卿。橘諸兄の子。橘奈良麻呂の乱の後、獄死。 奥山の真木の葉しのぎ降る雪のふりはますとも地に落ちめやも  万1010 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

万葉集巻第二十4452-4453番歌(秋風の吹き敷ける)~アルケーを知りたい(1673)

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▼4452番は「 内の南の安殿」という場所で肆宴 (とよのあかり) を楽しむ歌。景色が良い。4453番は前の歌の下の句を上の句に持って来て風景の良さを味わっている。秋風、花の庭、清き月夜。無粋な自分にも、良い時間が流れているのが分かる気がするぜ。  八月の十三日に、内の南の安殿に在して、肆宴したまふ歌二首 娘子らが玉裳裾引くこの庭に 秋風吹きて花は散りつつ  万4452  右の一首は、内匠兼播磨守正四位下 安宿王 奏す。 *娘たちが美しい衣裳を着て歩くこの庭に秋風が吹いて花が散っています。 秋風の吹き敷ける花の庭 清き月夜に見れど飽かぬかも  万4453  右の一首は、兵部少輔従五位上大伴宿禰家持。未奏。 *秋風が吹いて花が散っている庭は清い月夜にいくら見ても飽きません。 【似顔絵サロン】 安宿王  あすかべおう/あすかべのおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族。天武天皇の後裔、長屋王の五男。橘奈良麻呂の乱の後、佐渡に流罪。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

万葉集巻第二十4449-4451番歌(なでしこが花取り持ちて)~アルケーを知りたい(1672)

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▼4449番は左大臣(橘諸兄)が橘奈良麻呂の家で行った宴で、船王が詠った歌。続く4450番と4451番は奈良麻呂ではなく家持が後から作った歌。なぜ家持は自分が作った歌で補完したのだろう。後に奈良麻呂は乱を起こして捕まり、船王は拷問役になる。家持は何を考えてこの三首を残したのだろう、謎だ。  十八日に、左大臣、兵部卿橘奈良麻呂朝臣が宅にして宴する歌三首 なでしこが花取り持ちてうつらうつら 見まくの欲しき君にもあるかも  万4449  右の一首は治部卿 船王 。 *ナデシコの花を手に取ってしげしげと見るように、いつもお姿を拝見していたい貴方様であります。 我が背子がやどのなでしこ散らめやも いや初花に咲きは増すとも  万4450 *貴方様のお宅のナデシコが散ることがありましょうか。咲き始めた花のように増えることがあっても。 うるはしみ我が思ふ君はなでしこが 花にぞなそへて見れど飽かぬかも  万4451 *麗しいと私が思う貴方様は、ナデシコの花のように見ても見ても飽きません。  右の二首は、兵部少輔大伴宿禰家持追ひて作る。 【似顔絵サロン】 船王  ふねおう/ふねのおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族。舎人親王の子。757年、橘奈良麻呂の乱では、 杖で 謀反者の全身を打つ拷問を 監督する 。結果、道祖王・黄文王・大伴古麻呂そして奈良麻呂が死亡。 眉のごと雲居に見ゆる阿波の山かけて漕ぐ船泊知らずも  万998 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20