万葉集巻第十1878‐1881番歌(春日野に煙立つ見ゆ)~アルケーを知りたい(1443)
▼春の風景を詠う4つの歌。1878番は増水した川の瀬の音、「たぎつ」という言葉で激しそうだな、と思わせてくれる。台風の時は川や水路を見に行くのは危険だからダメだけど、春雨の増水くらいならば、いつもと違う風情を味わえるのだ。1879番は、野原で煮物をする煙が見えるという長閑な歌。アウトドアでの料理も道具だてが揃った今より、当時の娘子らのほうがちゃちゃっと要領が達者かもね。1880番は「思ふどち」という好きなキーワードがある。思ふどちがある歌に外れなし。
川を詠む
今行きて聞くものにもが明日香川 春雨降りてたぎつ瀬の音を 万1878
*今すぐ行って聞けるものなら聞きたいものです。明日香川が春雨で増水して激しくなっている瀬の音を。
煙を詠む
春日野に煙立つ見ゆ娘子らし 春野のうはぎ摘みて煮らしも 万1879
*春日野に煙が立っているのが見えます。これはきっと娘子らが春野の若葉を摘んで煮ているのでしょう。
野遊
春日野の浅茅が上に思ふどち 遊ぶ今日の日忘れえめやも 万1880
*春日野の浅茅の上で仲の良い仲間で遊んだ今日の日は忘れられない思い出です。
春霞立つ春日野を行き返り 我れは相見むいや年のはに 万1881
*春霞が立っている春日野を往復しながら、私たちは毎年、顔を合わせるのです。
【似顔絵サロン】740年、ポスト藤原広嗣の乱の人々:藤原 仲麻呂 ふじわら の なかまろ / 恵美押勝 706 - 764 奈良時代の公卿。藤原武智麻呂の次男。淳仁天皇を推す。恵美押勝の乱で孝謙天皇=道鏡に敗北、斬首。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10
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