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万葉集巻第十1858‐1861番歌(馬並めて多賀の山辺を)~アルケーを知りたい(1438)

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▼花をめでる歌四首。1859番は大好きなフレーズ「馬並めて」があるので、それだけで嬉しくなる。1861番は、山の花の輝きが川の水底まで照らし出す、と詠う。言葉で風景を描けるものなのだなあ。 うつたへに鳥は食まねど繩延へて 守らまく欲しき梅の花かも  万1858 *鳥が食べちゃうわけではないけど、繩を張って守りたくなる梅の花です。 馬並めて多賀の山辺を白栲に にほほしたるは梅の花かも  万1859 *馬を並べて多賀の山辺に出かけると、梅の花が山を白く染めています。 花咲きて実はならねども長き日に 思ほゆるかも山吹の花  万1860 *花は咲くけど実は生らない山吹の花。咲くまでにかかる日数は長い。 能登川の水底さへに照るまでに 御笠の山は咲きにけるかも  万1861 *能登川の水底まで明るく照らし出すように御笠山の花が咲き誇っています。 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 吉備 真備  きび の まきび 695 - 775 奈良時代の公卿・学者。717年から阿倍仲麻呂、玄昉ら遣唐使に同行して唐の長安に留学。735年に帰国、玄昉と共に橘諸兄を補佐。この体制に反発した藤原広嗣が乱を起こした。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十1854‐1857番歌(うぐひすの木伝ふ梅の)~アルケーを知りたい(1437)

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▼今回の4首の並びを見ると、なんだかうまいこと起承転結になっている印象。和歌を並べるとストーリーになる発見!  花を詠む うぐひすの木伝ふ梅のうつろへば 桜の花の時かたまけぬ  万1854 *ウグイスが枝を伝う梅の花が終わると、桜の花の出番です。 桜花時は過ぎねど見る人の 恋ふる盛りと今は散るらむ  万1855 *桜の花はまだ満開ではないけれど、見る人のために今が盛りというように散ってくれるのだ。 我がかざす柳の糸を吹き乱る 風にか妹が梅の散るらむ  万1856 *私が簪にしている柳の葉が風でひらひらするように、妻の梅の花も散るのだろう。 年のはに梅は咲けどもうつせみの 世の人我れし春なかりけり  万1857 *毎年、梅は咲く。けれども、この世で生きる私に花が咲く春はない。 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 聖武天皇  しょうむてんのう 701 - 756 第45代天皇。父親は文武天皇、母親は藤原不比等の娘・宮子。藤原広嗣が、政権を批判して乱を起こすも取り合わず。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十1850‐1853番歌(朝な朝な我が見る柳)~アルケーを知りたい(1436)

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▼1850番は作者が柳に呼びかけている歌なので、考えて見ると変なのだが、気持ちは分かる。人以外のものにも声をかけてコミュニケーションを取りたくなるのは今も昔も変わらないのだ。 朝な朝な我が見る柳うぐひすの 来居て鳴くべく茂に早なれ  万1850 *毎朝眺めている柳よ、ウグイスが来て鳴くよう早く茂ってくれ。 青柳の糸のくはしき春風に 乱れぬい間に見せむ子もがも  万1851 *青柳の細い枝が糸のよう。春の風で乱れてしまう前に一緒に見る人がいたら良いのにな。 ももしきの大宮人のかづらける しだり柳は見れど飽かぬかも  万1852 *大宮人が髪飾りにするしだれ柳は、いくら見ても飽きません。 梅の花取り持ち見れば我がやどの 柳の眉し思ほゆるかも  万1853 *梅の花を折り取ってしげしげと眺めると、我が家の柳の眉のような葉っぱを連想しました。 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 橘 諸兄  たちばな の もろえ 684 - 757 奈良時代の皇族・公卿。大伴家持と親交、『万葉集』に8首。藤原四兄弟死去の後、吉備真備と玄昉が補佐。反発した藤原広嗣が乱を起こした。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十1846‐1849番歌(霜枯れの冬の柳は)~アルケーを知りたい(1435)

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▼これからの季節がらに合う歌。枯れていた柳の芽、若葉。こういう生命力のまぶしさを喜ぶ気持ちがあれば、一方で、勢いに押されて下を向く気持ちもある。そういう後者の気分がこのごろ分かってきた。  柳を詠む 霜枯れの冬の柳は見る人の かづらにすべく萌えにけるかも  万1846 *霜枯れていた冬の柳から見る人が髪飾りにしたくなるような緑の芽が芽吹いています。 浅緑染め懸けたりと見るまでに 春の柳は萌えにけるかも  万1847 *薄緑色の布を懸けたのかと見えるほど、春の柳が芽を出しています。 山の際に雪は降りつつしかすがに この川楊は萌えにけるかも  万1848 *山では雪が降る一方、こちらの川楊は芽吹いています。 山の際の雪は消ずあるをみなぎらふ 川の沿ひには萌えにけるかも  万1849 *山では雪が消えないまま残っているけど、川沿いでは緑が芽吹いています。 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 凡河内 田道  おおしこうち の たみち ? - 740 奈良時代の武人。藤原広嗣の乱で、大野東人の率いる追討軍に討たれ戦死。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十1841‐1845番歌(冬過ぎて春来るらし)~アルケーを知りたい(1434)

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▼1841と1842は、雪が舞い落ちる様子を 梅の花びら に例えた歌とそのツッコミの歌。ひとつ詠って乙に構えていると何言ってんだよ、というやりとりが脱力系で良き。この後に続く1843から1845は春霞を描いた歌。前の二つの歌の後なので、あとひとつ何か刺激が欲しくなる。 山高み降り来る雪を梅の花 散りかも来ると思ひつるかも  一には「 梅の花咲きかも散ると 」といふ 万1841 *高い山の方から降ってくる雪。梅の花が散っているのかと思いました。<梅の花が咲いて散るのかと> 雪をおきて梅をな恋ひそあしひきの 山片付きて家居せる君  万1842  右の二首は、問答。 *雪を差し置いて梅を恋しがっているのですか。山裾に家を構えていらっしゃるというのに。  霞をよむ 昨日こそ年は果てしか春霞 春日の山に早立ちにけり  万1843 *昨日こそ年末を過ごしたというのに早くも春霞が春日の山に立っています。 冬過ぎて春来るらし朝日さす 春日の山に霞たなびく  万1844 *冬が過ぎ、春になったらしい。朝日が指す春日山に霞がたなびいています。 うぐひすの春になるらし春日山 霞たなびく夜目に見れども  万1845 *ウグイスが鳴く春になりました。夜目にも春日山に霞がたなびいているのが見えます 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 大和 長岡  やまと の ながおか 689 - 769 奈良時代の貴族・明法家。広嗣の乱に連座して流罪のち赦免。役人に復帰、地方官。仁恵なしと言われた人物。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十1837‐1840番歌(君がため山田の沢に)~アルケーを知りたい(1433)

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▼気持ちは春へと急いでるけど、天気が追い付かない歌。ウグイス、雪、野草のエグ、梅を歌に描き込むと視覚的・聴覚的に刺激されてよく伝わってくる。これは日本の伝統かな。 山の際にうぐひす鳴きてうち靡く 春へと思へど雪降りしきぬ  万1837 *山の際でウグイスが鳴いています。緑たなびく春がきたなーと思っていると雪が降ってきました。 峰の上に降り置ける雪し風の共 ここに散るらし春にはあれども  万1838  右の一首は、筑波山にして作る。 *山の峰の上に降り積もっていた雪が風に乗ってここに降るらしい。春なんだけど。 君がため山田の沢にゑぐ摘むと 雪消えの水に裳の裾濡れぬ  万1839 *貴方様のために山田の沢でエグを摘んでいると雪解けの水で衣の裾が濡れてしまいました。 梅が枝に鳴きて移ろふうぐひすの 羽白栲に沫雪ぞ降る  万1840 *梅の枝を鳴きながら移っていくウグイス。白い羽に沫雪が降りかかっています。 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 塩屋 古麻呂  しおや の こまろ ? - ? 奈良時代の官人・明法家。藤原広嗣の乱に連座し流罪。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十1832‐1836番歌(梅の花降り覆ふ雪を)~アルケーを知りたい(1432)

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▼2月、 いまの 寒い日と合いそうな歌。室内に籠ってばかりではなくて外を歩かねば、と思ふ。  雪を詠む うち靡く春さり来ればしかすがに 天雲霧らひ雪は降りつつ  万1832 *新緑が春風にそよぐ春がやってきたというのに、空には雲と霧が出て雪まで降ってくる。 梅の花降り覆ふ雪を包み持ち 君に見せむと取れば消につつ  万1833 *梅の花に降り積もる雪を大事に持ち帰って貴方様にお見せしようと思ったのに手に取ると消えてしまいました。 梅の花咲き散り過ぎぬしかすがに 白雪庭に降りしきりつつ  万1834 *梅の花は散ってしまったのに、白雪が庭にしきりに降っています。 今さらに雪降らめやもかぎろひの 燃ゆる春へとなりにしものを  万1835 *今さら雪が降るなんてあるでしょうか。陽炎が燃える春となったというのに。 風交り雪は降りつつしかすがに 霞たなびき春さりにけり  万1836 *風に交って雪が降っていますが、霞がたなびいて春らしくなりました。 【似顔絵サロン】740年、藤原広嗣の乱の関係者: 小野 東人  おの の あずまひと ? - 757 奈良時代の貴族。740年の広嗣の乱に連座し杖罪百回、伊豆国へ流罪。757年の橘奈良麻呂の乱に連座し杖で打たれる拷問の末、獄死。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10