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万葉集巻第十2162‐2165番歌(神なびの山下響み)~アルケーを知りたい(1463)

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▼蛙の歌4首。2163番は物思いをしているとカエルの声が聞こえて、気づくと夕方、という歌。ここはカエルじゃなくてヒグラシでも雁がねでも置き換えできそう。すると歌の風情がちょっと変わる。作者の物思いの内容が、カエルだと妻の事を考えてるんじゃないか、と思う。ヒグラシだと、これからの人生 (?) についてとか。雁がねだと、職場の人間関係(?)についてとか。知らんけど。 神なびの山下響み行く水に かはづ鳴くなり秋と言はむとや  万2162 *神奈備山のふもとで音を響かせながら流れる水と一緒にカエルが鳴いています。秋ですね。 草枕旅に物思ひ我が聞けば 夕かたまけて鳴くかはづかも  万2163 *旅に出て物思いしているとき聞こえてくるのは、夕方になったよと言わんばかりに鳴くカエルの声です。 瀬を早み落ちたぎちたる白波に かはづ鳴くなり朝夕ごとに  万2164 *瀬を勢いよく流れ落ちる白波を浴びながらカエルが朝に夕に鳴いています。 上つ瀬にかはづ妻呼ぶ夕されば 衣手寒み妻まかむとか  万2165 *川の上流の瀬でカエルが妻を呼んで鳴いています。夕方は冷えるから身を寄せ合おうと言うように。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 藤原 園人  ふじわら の そのひと 756 - 819 奈良時代末期~平安時代初期の公卿。事件への関与を疑われ事件直後に地方官に左遷。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2158‐2161番歌(蔭草の生ひたるやどの)~アルケーを知りたい(1462)

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▼今回はコオロギの歌が3首、カエルの歌が1首。コオロギの漢字は 蟋。この漢字、なかなか読めません、書けません。じゃあカエルは書けるかというと、こちらも書けません、読めません。 蝦。歌になると風情があって可愛い。  蟋を詠む 秋風の寒く吹くなへ我がやどの 浅茅が本にこほろぎ鳴くも  万2158 *秋風が吹いて寒々しい季節。我が家の浅茅の根元でコオロギが鳴いています。 蔭草の生ひたるやどの夕影に 鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも  万2159 *蔭草が生えている家の夕刻時に鳴いているコオロギの声はいくら聞いても飽きません。 庭草に村雨降りてこほろぎの 鳴く声聞けば秋づきにけり  万2160 *庭の草に村雨が降るとき、コオロギの鳴く声を聞くと、いよいよ秋だなあと感じます。  蝦を詠む み吉野の岩もとさらず鳴くかはづ うべも鳴きけり川をさやけみ  万2161 *吉野の岩の間から動かずに鳴くカエル。そうやって鳴くのももっともだ、川が澄んでいるからなあ。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 吉備 泉  きび の いずみ 743 - 814 奈良時代から平安時代初期の公卿。吉備真備の子。795年、藤原種継事件の関与が疑われ備中国に左遷。幼い頃より学才が評判。性格はかたくなで短気、物事に逆らうこと多。政務を行うにあたり原則を踏まえず処置するなど、強情で心がねじけていた。老いても変わることがなかった・・・ 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2154‐2157番歌(夕影に来鳴くひぐらし)~アルケーを知りたい(1461)

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▼今回は鹿の歌3首とヒグラシの歌一首。いずれも秋の歌。鹿の声を人の心に寂しさを思い起こさせ、ヒグラシの鳴き声は心地よいBGMのようだ。 なぞ鹿のわび鳴きすなるけだしくも 秋野の萩や繁く散るらむ  万2154 *なぜ鹿が侘し気に鳴くのでしょうか。もしかしたら秋の野で萩がどんどん散っているからでしょうか。 秋萩の咲きたる野辺にさを鹿は 散らまく惜しみ鳴き行くものを  万2155 *秋萩が咲いている野原で雄鹿は、散るのを惜しんで鳴いているのでしょう。 あしひきの山の常蔭に鳴く鹿の 声聞かすやも山田守らす子  万2156 *山で一日太陽の当たらない場所で鳴く鹿の声を聞いていますか。山の田を守る貴方様は。  蝉を詠む 夕影に来鳴くひぐらしここだくも 日ごとに聞けど飽かぬ声かも  万2157 *夕方の影に乗って来て鳴くヒグラシ。毎日聞いているけどいっこうに飽かない鳴き声です。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 和気 広世  わけ の ひろよ ? - ? 奈良時代末期~平安時代初期の貴族・学者。和気清麻呂の長男。785年、藤原種継暗殺事件に連座して禁錮。特別の恩赦で復帰。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2150‐2153番歌(山遠き都にしあれば)~アルケーを知りたい(1460)

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▼今回は萩と鹿を組み合わせで秋の情緒がしみる4首。それぞれの歌に特徴のある言葉がある。2150は「おほほしみ」、2151は「乏しくもあるか」、2152は「ともしみ」、2153は「露を別けつつ」。これらと萩と鹿が結合すると、あら不思議、秋の風情がしみる歌になる。 秋萩の散りゆく見ればおほほしみ 妻恋すらしさを鹿鳴くも  万2150 *秋萩が散るのを見ると気持ちが萎えるので、雄鹿は雌鹿に逢いたくて鳴くのです。 山遠き都にしあればさを鹿の 妻呼ぶ声は乏しくもあるか  万2151 *山から遠く離れた都にいるので、雄鹿が雌鹿に呼びかける声は聞こえませんね。 秋萩の散り過ぎゆかばさを鹿は わび鳴きせむな見ずはともしみ  万2152 *秋萩が散ってしまうと雄鹿はわびしく鳴くのだが、萩の花が見られないといって。 秋萩の咲きたる野辺はさを鹿ぞ 露を別けつつ妻どひしける  万2153 *秋萩が咲いた野原では雄鹿が、露を払いのけながら雌鹿のところに通っています。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 林 稲麻呂  はやし の いなまろ ? - ? 奈良時代の官人。785年、藤原種継暗殺事件で早良親王が春宮を廃されると、東宮学士として仕えていた稲麻呂も連座して伊豆国へ流罪。806年、恩赦。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2146‐2149番歌(山の辺にい行くさつ男は)~アルケーを知りたい(1459)

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▼鹿の声がうるさいから山の近くに住むのはお勧めしない、という 2146番 。鹿狩り行く猟師が多いというのに山でも野でも鹿が鳴いている、という2147番。そんな鹿の鳴き声を人に聞かせたい気持ちを詠う2148番。猟師に狙われるリスクを冒してまで鹿が鳴く理由を解く2149番。鹿はどんな鳴き声か気になってくる。猫の鳴き声がうるさかったのが懐かしく思える。今回の4首は、見ているうちに笑顔になる歌。 山近く家や居るべきさを鹿の 声を聞きつつ寐寝かてぬかも  万2146 *山の近くの家に住むのはやめたほうがいい。雄鹿の鳴き声がうるさくて寝るに寝られませんから。 山の辺にい行くさつ男は多かれど 山にも野にもさを鹿鳴くも  万2147 *山に狩りに行く猟師が多いというのに、山でも野でも雄鹿が出て鳴いています。 あしひきの山より来せばさを鹿の 妻呼ぶ声を聞かましものを  万2148 *山を通ってきたならば、雄鹿が雌鹿を呼ぶ鳴き声が聞けたことでしょうに。 山辺にはさつ男のねらひ畏けど を鹿鳴くなり妻が目を欲り  万2149 *山には猟師に狙われるのが怖いけれど、それでも雄鹿は雌鹿に逢いたくて鳴くのです。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 藤原 雄依/小依  ふじわら の おより ? - ? 奈良時代から平安時代初期の貴族。藤原永手の次男。785年、藤原種継暗殺事件に連座して隠岐国へ流罪。805年、流罪となっていた五百枝王らと共に赦されて帰京。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2142‐2145番歌(雁は来ぬ萩は散りぬと)~アルケーを知りたい(1458)

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▼今回は、動物は鹿と雁、植物は萩、そして季節は秋。この材料で絵が描けそう。 さを鹿の妻ととのふと鳴く声の 至らむ極み靡け萩原  万2142 *雄鹿が妻を呼んで鳴く声が届く先まで、萩原よ風に靡け。 君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の 秋萩しのざきを鹿鳴くも  万2143 *貴方様を思ってしょんぼりしていると敷野の秋萩を押し分けるながら鹿が鳴いています。 雁は来ぬ萩は散りぬとさを鹿の 鳴くなる声もうらぶれにけり  万2144 *雁が飛んでくる、萩の花は散る。すると雄鹿の鳴き声もうらぶれてくる。 秋萩の恋も尽きねばさを鹿の 声い継ぎい継ぎ恋こそまされ  万2145 *秋萩への恋しさも尽きないのに、雄鹿が妻を呼ぶ声が絶えず聞こえるので、思いは募るばかりです。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 紀 白麻呂  き の しろまろ ? - ? 奈良時代の貴族。785年、藤原種継暗殺事件で隠岐国へ流罪。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2138‐2141番歌(このころの秋の朝明に)~アルケーを知りたい(1457)

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▼2140番は 雁が詠っている歌。 2139番の人に問いかけている。人と雁の問答になっていて面白い。 鶴がねの今朝鳴くなへに雁がねは いづくさしてか雲隠るらむ  万2138 *鶴が今朝鳴いている辺りで雁はどちらに向かって飛んでいるのだろう。雲に隠れて。 ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく 幾夜を経てかおのが名を告る  万2139 *夜間飛行中の雁の声がうっすらと聞こえます。あと何日夜を過ごせば名前を名乗ってくれるのでしょうか。 あらたまの年の経ゆけば率ふと 夜渡る我を問ふ人や誰れ  万2140 *新年に仲間と夜間飛行している私に名を名乗れと仰るお方がいらっしゃいます。そっちこそ、どなたさんでしょう。  鹿鳴を詠む このころの秋の朝明に霧隠り 妻呼ぶ鹿の声のさやけさ  万2141 *秋の朝が明ける頃に、霧の中で妻を呼ぶ鹿の声がさわやかに聞こえます。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 伴 国道  とも の くにみち 768 - 828 平安時代初期の公卿。大伴継人の子。大伴宿禰姓から伴宿禰姓へ改姓。785年の藤原種継暗殺事件で父・継人が処刑(斬首)され、連座して佐渡国へ流罪。803年、恩赦により平安京に戻る。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10