万葉集巻第二十4408-4412番歌(家づとに貝ぞ拾へる)~アルケーを知りたい(1650)

▼家持が防人の歌の間に置いたインテルメッツオ。今回は長歌と短歌。長歌のタイトルは、防人が悲別の情を陳ぶる、で家持が手元に集まった防人の和歌を見て湧き上がる情を詠ったもの。防人として家族と別れるのはどんなに悲しく辛いことかを防人の気持ちになって詠う。

 防人が悲別の情を陳ぶる歌一首 幷せて短歌
大君の 任けのまにまに
島守に 我が立ち来れば
ははそ葉の 母の命は
み裳の裾 摘み上げ掻き撫で
ちちの実の 父の命は
栲づのの 白ひげの上ゆ
涙垂り 嘆きのたばく
鹿子じもの ただひとりして
朝戸出の 愛しき我が子
あらための 年の緒長く
相見ずは 恋しくあるべし
今日だにも 言どひせむと
惜しみつつ 悲しびませば
若草の 妻も子どもも
をちこちに さはに囲み居
春鳥の 声のさまよひ
白栲の 袖泣き濡らし
たづさはり 別れかてにと
引き留め 慕ひしものを
大君の 命畏み
玉桙の 道に出で立ち
岡の崎 い廻むるごとに
万たび かへり見しつつ
はろはろに 別れし来れば
思ふそら 安くもあらず
恋ふるそら 苦しきものを
うつせみの 世の人なれば
たまきはる 命も知らず
海原の 畏き道を
島伝ひ い漕ぎ渡りて
あり廻り 我が来るまでに
平けく 親はいまさね
つつみなく 妻は待たせと
住吉の 我が統め神に
幣奉り 祈り申して
難波津に 船を浮け据ゑ
八十楫貫き 水手ととのへて
朝開き 我は漕ぎ出ぬと
家に告げこそ 万4408
*大君のご命令なので防人たちが親と別れ妻を家に待たせて難波津に集まる。船から楫を突き出し今こそ我らは漕ぎ出すと家に知らせたい。

家人の斎へにかあらむ平けく 船出はしぬと親に申さね 万4409
*家じゅう皆の祈りのおかげで無事に船出したと親にお伝えください。

み空行く雲も使と人は言へど 家づと遣らむたづき知らずも 万4410
*空を流れる雲も使いだと人は言うけれど、家に連絡する方法が分かりませんがな。

家づとに貝ぞ拾へる浜波は いやしくしくに高く寄すれど 万4411
*家の土産にと思って貝を拾いました。浜の波は高く寄せて来ます。

島蔭に我が船泊てて告げ遣らむ 使をなみや恋ひつつ行かむ 万4412
*島の蔭に私の乗った船が停泊しています。家への連絡方法がないので恋しく思いながらこれから進みます。
 二月の二十三日、兵部少輔大伴宿禰家持。

【似顔絵サロン】上毛野駿河 かみつけの の するが ? - ? 奈良時代の官吏。上野国の出身。755年、上野国の防人の部領使。家持に防人の歌12首を進上、4404-4407番が収録。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

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