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大伴家持の万葉集3916-3921番歌~アルケーを知りたい(1222)

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▼家持はホトトギスの歌をたくさん作っている。読むと、へえ、ホトトギスかあ、と思う。思ったとたん、ホトトギスを介して 家持 と 読者 のコミュニケーションが成り立つ。すごいね。  十六年の四月の五日に、独り平城の故宅に居りて作る歌六首 橘のにほへる香かもほととぎす 鳴く夜の雨にうつろひぬらむ  万1916 *橘の花の香りがホトトギスが鳴く夜の雨のせいで薄らいでいくようだ。 ほととぎす夜声なつかし網ささば 花は過ぐとも離れずか鳴かむ  万3917 *ホトトギスが夜に鳴く声が惜しいので、網でとらえておけば花の時期が過ぎても鳴いてくれるだろうか。 橘のにほへる園にほととぎす 鳴くと人告ぐ網ささましを  万3918 *橘の花が香る庭でホトトギスが鳴いていると人が知らせてくれた。網で捕らえておくのだった。 あをによし奈良の都は古りぬれど もとほととぎす鳴かずあらなくに  万3919 *奈良の都は古びているけれど、昔から馴染みのホトトギスが鳴かないってことは決してない。 鶉鳴く古しと人は思へれど 花橘のにほふこのやど  万3920 *ウズラが鳴くこの家は古びていると人は思うかも知れないけれど、橘の花は香っています。 かきつはた衣に摺り付けますらをの 着襲ひ猟する月は来にけり  万3921  右の六首の歌は、天平十六年の四月の五日に、独り平城故郷の旧宅に居りて、大伴宿禰家持作る。 *カキツバタで染めた衣を身に付けた男たちが狩りをする月がやって来た。 【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。6歳年上。 アル=マンスール  al-Mansur 712 - 775 アッバース朝の第2代カリフ。アル=マンスールは勝利者の意。バグダッドの建設者。  〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

大伴家持の万葉集3900、1649番歌~アルケーを知りたい(1221)

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▼3900番は、七夕の日、織女が舟に乗ったという見立ての歌。1649番は、雪降る日の梅の歌。  十年の七月の七日の夜に、独り天漢を仰ぎて、いささかに懐を述ぶる一首 織女し舟乗りすらしまそ鏡 清き月夜に雲立ちわたる  万3900   右の一首は、大伴宿禰家持作る。 *織女が舟に乗ったようです。鏡のように清い月夜に雲が湧いたところをみると。  大伴宿禰家持が雪梅の歌一首 今日降りし雪に競ひて我がやどの 冬木の梅は花咲きにけり  万1649 *今日降った雪と競うようにして私の家の冬木の梅に花が咲きました。 【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。6歳年上。 杜甫  とほ 712 - 770 唐の詩人。國破れて山河在り 城春にして草木深し 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

大伴家持の万葉集3853-3854番歌~アルケーを知りたい(1220)

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▼ 痩せの大食いの石麻呂を 家持が からかっている歌。二人は仲が良いので、石麻呂は家持にうるさいよなどと返したのではないかと想像すると楽しい。  痩人を嗤咲ふ歌二首 石麻呂に我れ物申す夏痩せに よしといふものぞ鰻捕り喫せ  「めせ」の反なり   万3853 *石麻呂どのに私が助言しましょう。夏痩せ対策に鰻を召しあがれ。 痩す痩すも生けばあらむをはたやはた 鰻を捕ると川に流るな  万3854 *痩せてもこけても生きていれば良い。鰻を捕ろうとして川で流されないように(笑)。  右は、吉田連老、字は石麻呂といふものあり。 いはゆる仁敬が子なり。 その老、人となりて身体いたく痩せたり。 多く喫ひ飲めども、形飢饉に似たり。 これによりて、大伴宿禰家持、いささかにこの歌を作りて、もちて戯咲を為す。 【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。4歳年上。 大伴 熊凝  おおとも の くまごり 714 - 731 奈良時代の地方官吏。731年に国司の従人として肥後国益城郡から上京する途上で病死。万886-891 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二、三』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

大伴家持の万葉集1597-1599番歌~アルケーを知りたい(1219)

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▼家持の秋の歌。秋を詠うには、秋の野、秋萩、秋風、秋の露、と「秋」を頭に付けると良い。なるほど分かりやすくてヨシ。  大伴宿禰家持が秋の歌三首 秋の野に咲ける秋萩秋風に 靡ける上に秋の露置けり  万1597 *秋の野に咲いた秋萩が秋風に靡いている。その上に秋の露がおりている。 さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に 玉と見るまで置ける白露  万1598 *鹿が朝に立っている野の秋萩に、玉のように露がおりている。 さを鹿の胸別けにかも秋萩の 散り過ぎにける盛りかも去ぬる  万1599  右は、天平十五年癸未の秋の八月に、物色を見て作る。 *鹿が草の間を押し別けるよう歩いて秋萩が散っている。萩の盛りも過ぎたのだろう。 【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。4歳年上。 藤原 永手  ふじわら の ながて 714 - 771 奈良時代の公卿。藤原北家、藤原房前の次男。真楯の兄。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

大伴家持の万葉集1581-1591番歌~アルケーを知りたい(1218)

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▼ 橘奈良麻呂が宴を開いたときに集まった人々が詠んだ歌のコレクション。奈良麻呂の2首で始まり、 家持の弟の書持を含む 男女混合の8首の歌が続き、最後を家持で締める。 ▼みな思い思いに紅葉を手折ってかんざしにしている。  橘朝臣奈良麻呂、集宴を結ぶ歌十一首 手折らずて散りなば惜しと我が思ひし 秋の黄葉をかざしつるかも  万1581 *散ってしまうと勿体ないと思って秋の黄葉を手折ってかんざしにしましたよ。 めづらしき人に見せむと黄葉を 手折りぞ我が来し雨の降らくに  万1582  右の二首は橘朝臣奈良麻呂。 *めづらしい人に見せるために雨にもかかわらず黄葉を手折って参りました。 黄葉を散らすしぐれに濡れて来て 君が黄葉をかざしつるかも  万1583  右の一首は久米女王。 *黄葉を散らしてしまうような雨の中を濡れながらやって来ました。あなたが手折ってくれた黄葉のかんざしにしました。 めづらしと我が思ふ君は秋山の 初黄葉に似てこそありけれ  万1584  右の一首は長忌寸が娘。 *めずらしいと思う我が君は、秋の山の黄葉の美しさに似ていらっしゃいます。 奈良山の嶺の黄葉取れば散る しぐれの雨し間なく降るらし  万1585  右の一首は内舎人県犬養宿禰吉男。 *奈良山の嶺で黄葉を手折ると、しぐれと黄葉が一緒に降るらしい。 黄葉を散らまく惜しみ手折り来て 今夜かざしつ何か思はむ  万1586  右の一首は県犬養宿禰持男。 *黄葉が散るのを惜しので手折って持ってきました。今夜かんざしにしたので心残りがありません。 あしひきの山の黄葉今日もか 浮かび行くらむ山川の瀬に  万1587  右の一首は大伴宿禰書持。 *山の黄葉は今日も山川の瀬に浮かんで流れて行くのでしょう。 奈良山をにほほす黄葉手折り来て 今夜かざしつ散らば散るとも  万1588  右の一首は三手代人名。 *奈良山を飾っている黄葉を手折り、今夜かんざしにしました。あとは散ってもよろしい。 露霜にあへる黄葉を手折り来て 妹はかざしつ後は散るとも  万1589  右の一首は秦許遍麻呂。 *露や霜にあってきた黄葉を手折って持ってきました。それを妻がかざしました。後は散ってもよろしい。 十月しぐれにあへる黄葉の 吹かば散りなむ風のまにまに  万1590  右の一首は大伴宿禰池主。 *十月のしぐれにあった黄葉は風が吹くと 散ること

大伴家持の万葉集1566-1569番歌~アルケーを知りたい(1217)

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▼今回は家持が詠った秋の歌。秋を表すのに、雁、秋の田、穂、山の色づき、清く照る月夜、などの視覚ワードを使っている。雁が鳴く、という聴覚ワードもある。時間帯は夜もあれば昼もある。距離感は近いところから自分も濡れる雨、田んぼ、その上を飛ぶ雁、その上の雲、向こうに見える山、そして月。ワイドレンジだ。  大伴家持が秋の歌四首 ひさかたの雨間も置かず雲隠り 鳴きそ行くなる早稲田雁がね  万1566 *雨が降る中、早稲田の上を雲に隠れて飛びながらひっきりなしに鳴いている雁たちよ。 雲隠り鳴くなる雁の行きて居む 秋田の穂立繁くし思ほゆ  万1567 *雲に隠れて雁が鳴きながら飛んでいく。秋の田の稲穂がびっしり立っている様子が思い浮かぶ。 雨隠り心いぶせみ出で見れば 春日の山は色づきにけり  万1568 *雨が続いて心がふさぐので外に出てみると春日の山が色づいている。 雨晴れて清く照りたるこの月夜 またさらにして雲なたなびき  万1569  右の四首は、天平八年丙子の秋の九月に作る。 *雨が上がって月が清く照り渡っている夜だ、雲よ、たなびかないでおくれ。 【似顔絵サロン】大伴家持 (718-785) の同時代人。4歳年上。 ピピン3世  Pippin III 714 - 768 フランク王国の国王。カール・マルテルの息子。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

大伴家持の万葉集1494-1496番歌~アルケーを知りたい(1216)

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▼家持のホトトギスとナデシコの歌。ナデシコは漢字で石竹とか撫子と書く。季節は、春から夏と幅広い。  大伴家持が霍公鳥の歌二首 夏山の木末の茂にほととぎす 鳴き響むなる声の遥けさ  万1494 *夏山の木の末の茂みでホトトギスが鳴く。その鳴き声が響き渡っている。 あしひきの木の間立ち潜くほととぎす かく聞きそめて後恋ひむかも  万1495 *木の間をうまく飛び回りながら鳴くホトトギス。鳴き声を聞いていると、後あと恋しくなりそうだ。  大伴家持が石竹 (なでしこ) の花の歌一首 我がやどのなでしこの花盛りなり 手折りて一目見せむ子もがも  万1496 *我が家の撫子が花盛りです。手折って見せる人がいれば良いのだが。 【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。3歳年上。 岑 参  しん しん 715 - 770 唐の詩人。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html