万葉集巻第十九4163-4165番歌(ますらをは名をし立つべし)~アルケーを知りたい(1560)
▼男子たるもの、かく生きたいという思いを背負う4164番の長歌と4165番の短歌。「 後の世の語り継ぐべく 名を立つべしも 」や 「 後の世に聞き継ぐ人も語り継ぐ 」と、後の世を意識して今の行動を奮い立たようとしている。これは山上憶良の先行歌がある。家持は子供のころ父親の旅人と仲良くしていた山上憶良の姿を知っているから、文字の上だけの話ではない。この気合にはたじろぐ。 予め作る七夕の歌一首 妹が袖我れ枕かむ川の瀬に 霧立ちわたれさ夜更けぬとに 万4163 *妻の袖を枕にして寝よう。 霧よ、 夜が更ける前に川の瀬に立ちこめよ。 勇士の名を振はむことを慕う歌一首 幷せて短歌 ちちの実の 父の命 ははそ葉の 母の命 おほろかに 心尽して 思ふらむ その子なれやも ますらをや 空しくあるべき 梓弓 末振り起し 投矢持ち 千尋射わたし 剣太刀 腰に取り佩き あしひきの 八つ峰踏み越え さしまくる 心障らず 後の世の 語り継ぐべく 名を立つべしも 万4164 *ますらをたる者、後の世まで名を立てるように今を生きなければ。 ますらをは名をし立つべし後の世に 聞き継ぐ人も語り継ぐがね 万4165 右の二首は、山上憶良が作る歌に追ひて和ふ。 *ますらをは名を立てるべきなのだ。後世、その名を聞いた人が語り継げるように。 【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々: 佐伯 毛人 さえき の えみし ? - ? 奈良時代の貴族。764年、大宰大弐として大宰府に赴任。765年、乱に連座したとして左遷。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19