万葉集巻第十九4260-4263番歌(大君は神にしませば)~アルケーを知りたい(1590)
▼4260番と4262番は壬申の乱が平定した後の歌という。わざわざそれを言う意味は何だろうと思ふ。そして新たに都にしたのは、馬の腹が漬かるような、水鳥が騒ぐような沼地。不思議だ。 4263番と4264番は遣唐使として出発する人を見送る歌。行ってミッションを果たし必ず帰って来るのだぞ、と詠う。御酒奉る、とある。今月留学するますら健男がいるのを思い出した。 御酒奉ることにしようか。 壬申の年の乱の平定まりし以後の歌二首 大君は神にしませば赤駒の 腹這ふ田居を都と成しつ 万4260 右の一首は、 大将軍贈右大臣大伴卿 が作。 *大君は神であらせられるので、赤駒の腹が漬かるような田んぼの地を都にしました。 大君は神にしませば水鳥の すだく水沼を都と成しつ 作者未詳 万4261 右の件の二首は、天平勝宝四年の二月の二日に聞く。 すなはちここに載す。 *大君は神であらせられるので、水鳥が群れ騒いでいる水沼を都にしました。 閏の三月に、衛門督 大伴古慈悲 宿禰の家にして、入唐副使同じき 胡麻呂 宿禰等を餞する歌二首 唐国に行き足らはして帰り来む ますら健男に御酒奉る 万4261 右の一首は、 多治真人鷹主 、副使大伴胡麻呂宿禰を寿く。 *唐の国に行って御勤めを果たしてお帰りになる立派な男子に御酒を捧げます。 櫛も見じ屋内も掃かじ草枕 旅行く君を斎ふと思ひて 作者未詳 万4263 右の件の歌、伝誦するは大伴宿禰村上、同じき清継らぞ。 *櫛も見ず屋内を掃きもせずそのままに、旅に出る貴方様の幸いをお祈りしています。 【似顔絵サロン】 大将軍贈右大臣大伴卿 = 大伴 御行 おおとも の みゆき ? - ? 飛鳥時代中期〜後期の豪族。父親は右大臣・大伴長徳。子が三中。 大伴 古慈斐 おおとも の こしび 695 - 777 奈良時代の公卿。大伴祖父麻呂の子。藤原不比等が人物を見込んで娘を古慈斐の妻とした。 多治比 鷹主 たじい の たかぬし ? - ? 奈良時代の人。757年、橘奈良麻呂事件で捕縛され拷問死。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19