万葉集巻第三300‐302番歌(子らが家道やや間遠きを)~アルケーを知りたい(1283)
▼今回は三首。いずれも旅から自宅をめざす途上の歌。300と301番は、早く妻に会いたいという夫の心情を詠う作品。302番は、旅の仲間に急ぎましょうと呼びかける作品。 長屋王 、馬を奈良山に駐めて作る歌二首 佐保過ぎて奈良の手向けに置く幣は 妹を目離れず相見しめとぞ 万300 *奈良山での願掛けで、 いつまでも 妻と一緒に過ごせますようにと願いました。 岩が根のこごしき山を越えかねて 音には泣くとも色に出でめやも 万301 *岩がごつごつしている厳しい山を越えるのに難儀して、泣き言は 言う けれども、妻に会いたいそぶりは見せないのだ。 中納言 阿倍広庭 卿が歌一首 子らが家道やや間遠きを ぬばたまの夜渡る月に競ひあへむかも 万302 *皆さんの家まで、まだ道は少しあります。夜空を渡る月とどちらが早く着くか競争ですね。 【似顔絵サロン】 阿倍 広庭 あべ の ひろにわ 659年 - 732年 奈良時代前期の公卿。右大臣・阿倍御主人の子。長屋王との関係良好。 長屋王 ながやおう 676年 - 729年3 奈良時代前期の皇親・政治家。高市皇子の長男。藤原四子の策謀で自殺。長屋王の変。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=3